埼玉プール事故:組織的過失

プール事故

今回のふじみ野市大井プールでの吸水口事件。何故に痛ましい事件が起きたのか。誰にその責任があるのでしょうか。
以前学校プール排水口の責任について、裁かれるべき刑事責任の主体は「危険性を放置する教育体制」、「関連の役所体質」であり、教育関係者の組織的過失であると考えました(拙著「あぶないプール」)。でも、今回の事件は公営プールで起きており、問題となる組織的過失の範囲について少し違った見方をしています。どういうことかといえば、…。

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今回の事故責任について巷ではいろいろと云われています。安全柵の固定を針金でしていたのが問題だ、プール監視員の質が低い、緊急対応が不十分だったとか、管理請負会社の無責任な丸投げ姿勢や最近流行りの指定管理者制度に原因がある、あるいはプールのオーナーであるふじみ野市こそ責任を問われるべきだという人もいます。これらはそれぞれ当たっています。でも、責任の一端をつついているだけです。

上記以外には、危険なプールの開業を止めることができた埼玉県保健所の責任が、東京新聞や毎日新聞等の記事で露わになりました。プール運営についていえば、この責任はきわめて重く、なぜかといえば、権限があるかないかの大きな違いがあるからです。つまり、受託会社や監視員は請負でしかないのに対し、保健所はプール開業の監督権限を有し、今回でも前もって杜撰なプールだと判断しておれば、開業そのものをストップできました。でもしませんでしたし、チェックも行っていないことが報道で明らかになりました。

つまり、プールの吸排水口が危険な場所だという認識が上記の関係者らにはなかった。でも、責任を担う関係者は彼らだけでしょうか。いえいえ、まだ登場していない他の関係者もいます。それは、問題のプールそのものを設計し、施工した業者・人たちです。これらの責任はこれから明らかにされ、そして追及されるものと期待しています。

さて、組織的過失といった場合、これら関係者の責任の重さは同等なのかどうか。整理してみましょう。

  • ふじみ野市(教育委員会?):所有者責任、プール設計施工管理の責任
  • 埼玉県(保健所):プール指導要綱による指導責任、プール開業届による監督責任
  • プール設計会社:安全で快適なプール設計を行う責任
  • プール施工会社:設計図面に基づいた施工を実施する責任
  • プール管理受託会社(監視員含む):プール管理点検業務に関する責任

メディアで取り上げられてきたのは、まず、プール管理の受託会社やその丸投げ会社の監視人の責任でした。そして、その杜撰な契約行為を行ってきた当のふじみ野市の責任も話題になっています。でも、ふじみ野市の責任はそれだけではありません。簡単にはずれてしまう吸水口の安全柵を持つプールを作った責任、それを運営してきた責任がまず問われるべきなのですが、そんな雰囲気にはなっていない。取り調べを行っている警察は大変だろうけど、もっと大掴みに問題を捉えてほしい。

既に指摘してきたように、当初のプール設計で吸水口部分はどうなっているのか。安全柵は現在のようなものだったのか、それとも当初は違うモノだったのか。誰が設置したのか。

現在のような杜撰な安全柵であったとしたら、それを設計し、許可したのは誰か。もともとふじみ野市(旧大井町)が設計したのか、それとも外部に設計委託したのか。設計者や施工業者は吸水口の危険性に気づかないようなシロウト業者だったのか。だとしたら、そんな低レベルの会社に施工させたのは誰なのか。・・・・言い出したらまだまだたくさん出てきます。

関係者の責任の重さは同等なのかどうか、
責任の重さという観点でいえば、一番はふじみ野市であり、その次に重いのは監督権限を有していたはずの埼玉県。私はそう考えています。ふじみ野市長が被害者の死に真摯に向き合うつもりなら、葬式会場の外でお悔やみをしていたのが演技でないのなら、上記のQに対する材料を表に出さなければなりません。