甘い罠

.Books&DVD… .Lowcarboあるいは糖質制限

甘い罠  ――小説 糖質制限食まるで官能小説のようなタイトルですが、この本は副題にあるように糖質制限を話の根幹に置いたもの。今年1月末に上梓されました。

主人公は新進のフードコンサルタントの女性。ある大手チェーンレストランのメニューを請け負ったのですが、自分の父親が糖尿病になったことがきっかけになり、食についてあれこれ模索しながら根本的に考え直していくという話です。糖質制限に興味はあるけど、理論を学んだり理屈っぽいのは面倒だと思う人にもお薦め。

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我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。 ――現代病を治す糖質制限食まず作者の鏑木蓮さんについて。彼は推理小説の書き手ですが、私が氏の名前を知ったのは昨年読んだ宮本輝さんの「我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。」の中。その本の最初に宮本さんが糖尿病になった時、糖質制限のことを伝えたのが鏑木さんだっという下りがあります。その鏑木さんが上梓した糖質制限本ですから、こりゃ読んでみたいなぁと思い、ゲット。

ストーリーは例によって読んだ人のお楽しみとして、この本が面白いのはシンプルな糖質制限のヨイショ本になっていないこと。宮本さんの本によると、鏑木さんも糖質制限で糖尿病のコントロールが上手くいっているようですから、糖質制限を礼賛して当然ですが、そこに留まらず、もう一歩先を行く内容になっています。ここが糖質制限を薦める医療本との違いで、創作だからできる展開です。

一歩先を行くという内容とはどんなものか。糖尿病の人が糖質制限するのは医療目的だからオッケイ。これはいいでしょう。でも、すべての人が糖質過剰の食になっている現状はどうしたらいいのか、また、どう周知するのか。その解決策としてみんなで糖質制限すれば良いと単純に訴えたら、いったい何が起こるのか。資源の手当やコスト負担はどうなるのか。社会全体で考えるべきことは山々あるのですが、小説ではその厄介な問題の入り口に迫っていきます。

私自身にも解があるわけじゃないけど、そのことについて鏑木さんのまとめでもまだまだ不十分。でも、そのことを考えさせてくれるのがこの本の素晴らしさ。この本は糖質制限を行っている人にも意義深い内容となっています。糖質制限に興味がある人、これから始めようという人、既に実践している人、誰にでも楽しめる本です。お薦め。

蛇足ですが、この本のタイトルをそのまま英語にするとハニートラップ(Honey trap)となりそうですが、それではもろにツツモタセになっちゃうんで、まんまシュガートラップ(Sugar trap)とするのが一番ですね。

chain13