埼玉プール事故:吸い込まれる時の穴のサイズ

プール事故

ふじみ野市のプールで起きた吸水口事件の後、全国各地で緊急調査が実施されています。その報告の中「給排水管のサイズが15センチだから吸い込まれることはない」という弁解?を数カ所で見つけました。とんでもない勘違いです。15センチなら肘や膝が入り込むと予想以上の吸引力が働きます。人を吸い込んだもので私の知っている最小サイズは、わずか5ミリ幅で直径9センチ弱の円周部分。管径が小さいから大丈夫というのは何の安全保証にもなりません。…


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「わずか5ミリ幅で直径9センチ円周部分」とは何か。私は既にこの事件をお知らせしていますが、まだご存じない方は是非ご一読下さい。 >ジェット風呂とプール排水口

拙著「あぶないプール」の繰り返しになりますが、人を吸い込む理屈から説明します。
まず、吸引力のもとになるのは水を循環させるポンプの力です。普通の学校プールであれば水質改善のための循環処理ラインについているポンプの力であり、流水プールであれば水の流れを作るための起流ポンプの力となります。先のジェット風呂であれば、ジェット噴流を作るための小型ポンプの力が吸引力のもとになります。

ジェット風呂なんてそんな小さなものでも大変なのか? 大変なのです、残念ながら。問題の穴に吸い込まれてしまうと、水流断面を狭めてしまい、開口部の流速が急激に増加します。それに応じて摩擦も加わり、吸引力は一般の予想を超えるほどに上がっていきます。ほとんど閉塞状態になれば、学校プールに備え付けられているような10キロ程度の水圧差を作るポンプでも200キログラム重の力となることは既に説明した通り

流水プールでは起流ポンプの吸引力は循環処理用のポンプよりもずっと大きいのでより力は大きくなります。一方ジェット風呂のポンプは小型なので吸引力の源は小さい。でも、どちらも危険は危険で、人を吸い込む理屈は同じです。
問題にすべきは、ポンプ能力の大小ではなく、穴を閉塞した時に生み出される力の大きさの方なのです。ジェット風呂で髪の毛を引き込まれ死亡した例をみるなら、わずか「5ミリ幅で直径9センチ弱の円周部分」でも、人を殺してしまう危険性があることに注意しなければなりません。

ようするに、

吸水管の穴のサイズが問題なのではなく、
その穴にかかる吸引力の大きさが問題

なのです。

吸引管のサイズを問題にしては判断を間違います。「15センチだから吸い込まれることはない」という考え方は先の理屈を無視し、安全性を顧みない誤った考え方。こんなことを未だに云っているプール管理者がいることに呆れ、悲しくなってきますが、こういう人たちに命を預けるのは実に危険きわまりないといえましょう。そんな管理者のいるプールには近寄らないように。