水道使用量減で料金値上げ

Water

先週末の3月18日朝日新聞東京本社版夕刊のトップ記事は「減少 家庭の水道使用 売れる「節水家電」 飲み水はペットボトル 自治体 負担重く 神奈川県、2割弱値上げへ」というものでした。その記事には私のコメントもついています。お読みになった方はどれくらいいらっしゃるのかわかりませんが、補足コメントをさせて下さい。…

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この記事は東京版のみ。関西などには載っておりません。東京近辺で見た見たというお話があっても私にはどんな記事だかわからないのでお返事のしようがありませんでした(苦笑)。今日執筆された記者からくだんの新聞が送られてきましたので初めて中味を知った次第です。

さて、記事のストーリーを簡単にいえば、水道の使用量が減ってきたー> 料金収入が落ち込んできたー> 神奈川県では水道料金の値上げに踏み切った・・・ となります。

それに対する私のコメントはこうです(紙面掲載分とは少し変えます)。

水道使用量は各地で減っている。料金値上げも全国的傾向。課題な需要予測で無駄なダムを造り続け、大量の水を作り配る仕組みを構築してきたツケが表面化してきた。たとえば水洗トイレは70年代の約3分の1の水で済むようになっており、使用者が節水を意識しなくても水の使用量は減っていく。行政はそういう時代の流れを把握しなければ未来はない。

以上。
これでは素っ気ないので話を続けましょう。

さて、なぜ水の使用量が減ってきたのか?

理由はいろいろあります。生活スタイルの変化で水を大量に使うことがなくなった。記事で指摘したトイレの設計変化はその1つだし、その他もろもろの機器器具による要因もあるはずです。雨水利用でトイレの水洗用水を賄うケースもわずかづつですが増えてきました。
間違いないのは、水を無尽蔵に使う生活を希求する人がいなくなってきたこと。「もったいない」はキャッチにするまでもなく、既に始まっていたというわけです。

一方、行政は公共事業の経済波及効果の方を重視し、無駄な水資源開発を積み重ねてきました。その結果、水はたっぷりあるのに使う人はおらず、大量の水を集め処理し配るシステムは有効に活かせない。水道当局はそのしわ寄せを料金の値上げに持っていく。これがストーリーの根幹です。

どうして水道行政は水道水量の低下を考慮しなかったのか?

水量が減るような計画を持ち出すモチベーションもインセンティヴも行政内部にはありません。むしろ事業の縮小になるような供給量の減少傾向には目をつぶり、むしろ逆に増える増えると呪文のように唱えて税金を無駄に投入してきました。建設資本寄りの行政施策と云ってもいいですし、高度経済成長の惰性といえばそうかもしれませんが、公共工事の常で道路も橋もいっしょであることは皆さんもご存じの通り。考慮しなかったのかではなく、考慮するような仕組みになっていないというべきところでしょうか。

料金値上げしか対処する方法はないのか?

1000万円の売り上げを見込み、それがないと来年度の商売が成り立たないというお店を考えてみて下さい。500万円しか売り上げがなかったら、500万円は資産を食い潰すか、どこから借りてくるか。でも製品の値段を2倍にすれば、なんとか1000万円の売り上げは確保できそうだから、値上げしよう。これが今回の神奈川県の料金値上げの本質です。別に神奈川だけではなく、全国的な水道料金値上げの傾向でしょう。そこには問題の原因に対する責任は見えません。はたして値上げしかないのかと問われれば、とりあえずの経営合理化ではそうかもしれませんが、責任の所在が明確でないと何度も同じことを繰り返すだけです。

値上げすれば問題は解決するのか?

行政の当事者責任が問われない値上げでは本質的な問題解決はできません。なぜ値上げしなければならなくなったのか。今回の神奈川県の例では宮ケ瀬ダムという無駄な水資源開発のツケが重くなったことに大きな原因があるとのことですが、それは計画当時からわかっていたことではなかったのか。それをごり押しで進めてきた行政当局の責任が問われない限り、姿カタチを変えて水道料金は繰り返されるだけ。
まずは値上げ要因の明快な説明とその責任の所在、そしてそれを繰り返さないための方策を行政自らが示すこと。それがない限り、役人の無策さに対するツケ払いは永遠に続くことでしょうし、そうなれば、水道事業の「郵政型民営化」という悲喜劇?!もそんなに遠くありません。

以前にも大阪市の実例を引きつつ、「水道水が使われなくなってきた」というのをアップしていました。今回の朝日記事に示される通り、関東圏でもその兆候は明らかになってきたというべきでしょう。水道使用量の減少はこれから全国でどんどん進みます。それに応じて料金も次第に値上げされていきます。要するに、行政の失敗・失策のツケ払いは私たち1人1人に被さってくるというわけです。イヤですね。とりあえずの値上げは仕方なしとしても、今までの行政責任を明確にすることはきっちり要求していきませう!

(2006/03/23 第一稿)