ソーラー会社、相次いで破綻あるいは撤退

.opinion 3.11

3.11以降、メガソーラーなんて勇ましい言葉が聞こえる日本。でも、ソーラー発電の本質から外れたような考え方では上手くいかないだろうと、私は指摘してきました。
しかし、事態はもっと深刻で悲惨なようです。ソーラーパネルを製造している会社がバタバタ破綻したり、事業から撤退しているのが現実です。何故なのか?

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本日発売の週刊ダイヤモンド(2012 11/3号)によると、パナソニックがマレーシアで計画中のソーラーパネル製造の新規事業を事実上ストップするらしい。ソーラー事業は将来的に利益が出ないというのが理由のようです。パナソニックが旧サンヨーのパネル技術を継承して、いざこれからシェア奪回という矢先でした。パナソニックのソーラー事業はまだ黒字ですが、シャープは219億円の赤字、ソーラーフロンティア(旧昭和シェルソーラー)は288億円の赤字等々、やればやるほど損という有様です。

世界を見渡してみると状況はもっと悲惨です。

ドイツ最大手のQセルズは昨年4月に倒産。それ以前にゾロンやソーラーミレニアムも破綻していますから、今やドイツのソーラー発電業界はほとんど壊滅的です。脱原発のドイツでなぜソーラー事業が破綻するのか。その理由について、日本の電事連は「低コストを武器とする中国企業の参入や供給過剰、販売価格の低下などによって、急激に業績が悪化して経営破綻に追い込まれたのが実態」としています。しかし、ドイツの新エネルギー政策の中で、風力発電やコンパクトなコンパインドサイクル発電等が中心に据えられ、ソーラー発電の位置づけが変化したこと、その変化を見誤ったことの方が大きいのではないでしょうか。

ドイツのジーメンスは10年前には世界トップクラスのソーラーパネル製造会社でしたが、既にソーラー事業から撤退しており、変化を先読みしていたと言えそうです。パネルさえ作っていれば儲かると考えた会社が潰れてしまったということだと私は考えます。

米国ではどうか。
こちらも、次々にソーラー発電関連企業が会社更生法の手続きを行い、今年9月には大手のソリンドラまで経営破綻。それぞれの会社は中国などの安い製品に負けた等と云っているようですが、果たしてそうなのか。オバマの「グリーンニューディール政策」の下、政府から補助金をたっぷり貰ったことで安心し、価格の低減や更なる技術開発を怠ったのが本当のところではないでしょうか。

一方の中国。ドイツや米国のソーラー企業から仕事を奪ったと言われる中国の企業も芳しくありません。最大手・価格リーダーのサンテックパワー(中国)は500億円を超える赤字を抱え込み、米国市場での株価が1ドルを切って上場廃止の危機に陥っています。中国企業も青息吐息なのです。

なぜそんなことになったのか。ここ数年のソーラーバブルの中で、いったい誰が儲けているのか。

日本では、一般家庭用ソーラー発電設備は、関連業界の技術革新や生産量増加のおかげで10年前に較べると半額程度になり、導入しやすくなっています。特に3.11以降、脱原発の動きもあり、全国的にソーラー発電を導入する人たちが増えて、ソーラー関連業界は儲けていると思っている人が多いのではないでしょうか。でも、ソーラーパネル屋さんは赤字を抱え込んでいただけでした。安い安いと云われる中国製パネルですが、日本国内ではそれほど安いわけではありません。差額はいったいどこに流れているのか。大手量販店や工事屋さん・仲介企業の懐にバブルが流れ込んでいるのでしょうか。

一方、メガソーラーという大規模な設備事業は、場所を提供する不動産会社や工事を請け負う土建・設備会社がニコニコするような仕組みです。本当にソーラー発電の利点を活かすのなら、小規模なソーラーを広範囲に細かく設置して送電ロスを省き、その場その場で有効利用していく方がベターです(逆に、そんな事業は土建資本や不動産資本にとっては旨味がありません)。

シャープは昨今の経営危機の中でソーラー発電の身売り先を探し始めているそうですが、損しか生まない事業を買い取る会社があるはずもなし。パナソニックも新工場凍結、他の企業も利益が上げられないのは複雑な業界事情がありそうです。いずれにしても、作っても儲からなければ企業活動として成り立ちません。

このままいけば、シャープもパナソニックも他の会社もソーラー発電事業を諦め、脱原発の道が余計にイバラの道になってしまうことを心配しています。

(追記) この続きは、シェール