ヤクザと原発

.Books&DVD… 3.11

ヤクザと原発 福島第一潜入記暴力団専門ライターの鈴木智彦さんがが東電福一原発に作業員として潜り込んだ命がけのルポを中心に、ヤクザなしには存在できない原発の現実を暴いています。

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ヤクザというのは社会の矛盾に寄生する、原発はまさにその最たるものだ、というのが著者の言い分。この本は東電福島第一原発への潜入ルポというより、原発とヤクザが共存する理由について鋭く突っ込んだ取材モノ。

取材先のヤクザ曰く、「原発は儲かる。固いシノギだな。動き出したらずっと金になる。これ一本で食える。シャブなんて売らんでもいい」とのこと。また、「原発はタブーの宝庫。それが裏社会の俺たちには、打ち出の小槌となるんだよ」という台詞には妙に納得させられます。その詳細は本の中で紹介されていますが、御用学者やメディアの飼育料どころか、この本で紹介されるようなヤクザの手数料までが電気料金に上積みされていくのですから、電気料金がどんどん高くなっていくのも宜なるかな。

ヤクザ社会にも西高東低というのがあり、関西よりも東北はヤクザにとっては棲みやすい場所らしい。本書では福島の原発周辺では地域と一体化している様も紹介されています。警察は福一原発の事故対応からヤクザを排除したかのように宣伝していますが、周囲の除染作業などへ移動させただけという下りにも、やっぱりなぁと思う次第。

著者は「原発が都市部から離れた田舎に建設されるのは、万が一の事故の際、被害を最小限にとどめるだけではない」とし、その理由を「地縁・血縁でがちり結ばれた村社会なら、情報を隠蔽するのが容易である」と喝破しています。だからこそ「建設場所は、村八分が効力を発揮する田舎」なのだというわけ。あぁ、なるほどなるほど。これは私が気がつかなかった視点でした。

著者は「問題は線量より汚染度」であるとし、放射性物質の吸い込み等々、体内に入り込んで被曝させてしまう内部線量の危険性を指摘しています。要するに、何々シーベルトみたいな空間線量ではなく、核廃棄物でどれくらい対象場所が汚染されているのかを問題にせよというわけですが、これは基本的かつ重要な指摘です。大事なことなので機会があれば別建てで紹介することにします(投稿未定)。

この本、ヤクザ専門ライターならではの取材内容が得難く面白い。最後のページで紹介される、「ヤクザもんは社会のヨゴレ、原発は放射性廃棄物というヨゴレを永遠に吐き続ける。似たもの同士…」という、あるヤクザの台詞は、まさに原発とヤクザとの関係を一言で言い切っているようです。