十兵衛の右目

.opinion 3.11

柳生十兵衛 七番勝負 [DVD]十兵衛というのは柳生十兵衛。映画やTVでご存じのように柳生十兵衛三厳は左目に眼帯をしています。片側の目が見えなかったのかどうかは諸説いろいろですが、まぁそれはさておき、この左目を失った時の逸話を子どもの頃読んでびっくりした覚えがあります。その話について紹介しておきませう。

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柳生十兵衛を知らない人は少ないでしょうが、念のためにWikiのページはこちらです。

柳生十兵衛は江戸初期の有名な剣客で、新陰流の使い手でした。その十兵衛がまだ小さい頃、剣術の訓練中に父である柳生宗矩但馬守が投げた礫が当たり失明したそうな。その時、十兵衛がとった行動にびっくり。右目を庇って手で押さえたというのです(この話の真偽は不明です、念のため)。

普通は”グギャ〜!”とか”痛いっ!”と言って傷ついた左目の方を押さえたり労るのではないのか。それなのに何故反対側の右目を押さえたのか。こどもの頃の私にはさっぱり理解できません。ところが、それを見た父の宗矩但馬守は「それでよし」「それが正しい対処だ」等と褒め、十兵衛の剣術の才能を高く評価したというのです。

どういうことかというと、傷ついた左目に構っていても仕方なし、失ったものは取り戻せない、ならば無傷の右目を防護することに専念しなければならない、それをとっさに実行した息子の行動は間違いなしというわけです。

これを知った時、私がそんな目に遭ったら本当にそんな行動がとれるだろうかと訝しく思ったことを今更のように思い出します。でも、理屈はわかります。右目まで失ってしまっては相手を見ることもできませんもんね。この逸話はずっと私の考え方のベースに居座り、予防原則の理解を助ける一助となりました。

勘の良い人は私が何を云いたいのか、既にお気づきでしょうね。そうです。左目を失ったら、潔く左目を捨て、残った右目を守れということをもっと敷衍していってはどうかということ。

決して起こらないと喧伝されていた原子力発電の大事故が起きてしまった。不幸なことに、プルトニウムを含め核燃料が周囲に吹き飛ばされ、放出された放射性物質の量はチェルノブイリ原発事故の規模にだんだん迫ってきました。

悪いことに、昨年末から東電福一原子炉には不穏な動きが出ています。でも、御用メディアは国の終息宣言をまき散らすのみで、事実を調べようともしないし伝えようともしていません。除染という幻想を振りまいても、深刻な汚染をどこかの地域や海洋に移動させるだけでしかありません。

マンション建設に使われたコンクリートに放射性物質入り採石が使われていたことが明らかになってきましたが、昨年3月に下水汚泥から検出された時に今回の事件は予想しなければならないことでした。それを放置してきたのは誰だったか。その辺を追及せずに採石業者を苛めるのは弱い者苛めでしかありません。

さて、現代の柳生十兵衛ならどうするだろうか。失った左目とは何か? 残った右目を守るということは何のことを指すのか? その答は個々人によって変わってくるはずです。是非一度ご自身とご家族を念頭において、それぞれの「十兵衛の右目」を考えてみてはどうでしょうか。