東電と朝日の醜い関係

.Books&DVD… .opinion 3.11

東電帝国―その失敗の本質 (文春新書)元朝日新聞の志村嘉一郎さんの書いた「東電帝国 その失敗の本質」を読むと、朝日新聞がいかに東電と密接に関わりながら原発推進に加担してきたか、よくわかります。汚さ醜さがストレートに書かれているのですが、読後感が良くない。悪いのは東電、新聞は被害者というような著者の弁明(本にそう書かれているわけではありません、私の勝手な推測)が垣間見えてくるからでしょうか。

・・・

朝日新聞が原発推進に舵をとったのは1974年だと志村氏はいいます。その数年前、石油危機の後で広告収入が落ち込んできたので、原発推進の意見広告をとろうということになったそうな。そして、当時の東電トップ木川田天皇(注)の采配で、1974年7月から月1回10段抜きの原子力コマーシャルが登場。

この件で、焦ったのは読売新聞だったという記述には笑ってしまいました。曰く、原発を進めてきたのは正力松太郎で、ライバル誌の朝日に広告とられたら面目なしということだったとのこと。毎日は当時原発反対キャンペーンだったのに、やがて原子力マフィアの軍門に下っていくあたりも赤裸々に説明されています。要するに、新聞も広告収入・カネが問題だったということ。原発誘致の自治体と何ら体質的に変わらない。そんなんで報道を名乗るとは実に恥ずかしい。

さて、新聞にそんなデカイ広告を出すとしたら、1回数千万円はかかります。ではお金はどこから出たのか。この点も志村さんの説明は私たちの予想通り。木川田天皇はブンヤ上がりのダイアモンド社重役(当時)の鈴木建なる人物を電事連広報部長に引き抜き、マスコミ工作をするのですが、その鈴木某が広告宣伝費は原発建設費の経費だと電力会社を説得したとのこと。つまり、庶民の払う電気料金を使って原発安全神話を作り出す作業が始まったのです。くそったれ!

まぁ本の中には実名入りで細かいところまであれこれ書かれています。でも、著者が何を云いたいのか、最後の最後まで分からず仕舞い。内部告発的に内情ばらしをしたというのはわかります。でも、それだけ。この本読んでも今後朝日新聞ほかメディアがまっとうな道を歩むかというと、う〜〜〜ん怪しいなぁ。それとも、メディアの本質とはこういうものだ、みんな注意しろって、そんな話だったんでしょうか。

(注)東電の木川田一隆(敬称略)をいかにも立派な人物だとして紹介する評論家は多々いますが、311以降でもまだそんなことを言い続けるなら、状況錯誤の愚か者だと私は云いたい。だって、木川田本人が東電のサービスエリアとは関係ない福島県に東京電力の原発を作った張本人だから、です。