またプールで飛び込み事故 

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2011年7月15日、福岡県大牟田市延命中学校で体育の授業中に飛び込み練習をしていた男子生徒(中3)がプールの底で頭を打ち、首の骨が折れるという痛ましい事故が発生しました。生徒は意識もあり、回復に向かっているらしいのですが、私が何度も指摘してきた通り、原因は遊泳者ではなくプールの構造の方にありそうです。

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問題のプールは水深1.1メートル。でも、報道写真をみると、スタート位置がコンクリートで30cm以上壁のように立ち上がっており、生徒からすると水面までの距離は身長以上に感じられるはずです。こんなプールで飛び込みを行って問題はないのでしょうか。結論からいえば、非常に危険です。

(写真は朝日新聞WEB版2011/07/19の一部を切り取ったものです)

文科省(昔は文部省)がプール水深を定めたのは1966年。その時の生徒の身長と現在のではかなり違います(グラフは拙著「あぶないプール」p.32)。つまり、昔は安全だと思っていた水深が今では全く事情が違ってきたため危険な状態になってしまったというわけです。1966年と1995年では身長差で3〜7cm、中三でみると7cmも平均身長が異なります。今回の被害者の身長がいくらなのかわかりませんが、もし平均よりも高いのなら、危険性はより増していたというべきところです。

生徒の身長に対し相対的に水深が浅ければ、プールの底にぶつかる危険性は増していきます。実際、学校現場では軽微な事故は日常的に発生しています。プール管理側もそのことを知っているため、たとえば日本水泳連盟の規則では(飛び込み位置から)前方5mまでの水深が1.2m程度までのプールでは飛び込み台を作ってはならないとしていることも拙著で紹介しています。

でも、ほとんどの学校プールはこの安全規則を守っていません。なぜでしょうか? おそらく飛び込みスタート台があるのがプールらしいと勝手に考え、プール設置の基準や規則を知らない、あるいは無視する設計者や建設業者が後を絶たないこと。加えて、管理する教育委員会もプール構造に関して不勉強であること。おまけに過去にたくさん事故が起きても、悪いのは生徒の不注意であるという誤った見解がまかり通っていること等です。

生徒が注意すれば飛び込み事故は防げるでしょうか? 無理です。プールの構造的欠陥を個人の注意でカバーできるとするのは責任を生徒側に転嫁しているだけ。過去の事故例は拙著で紹介していますが、原因はプール構造の欠陥とみなすのが妥当な例ばかりです。そして被害はとても悲惨です。

本来安全を確保するというのは、危険が顕在化する前に芽を摘んでおくのが一番です。でも、この安全対策が全国のプールではできておりません。おそらく、危険な飛び込み台を設置する「危ないプール」は今現在もたくさんあって、次の被害者を待ち受けていることでしょう。いくら教師が監視していたところで、事故はロシアンルーレットみたいなもの。きわめて危険です。

そんな悲しい繰り返しを防ぐ方法は危険な飛び込み台を撤去すること。これに尽きます。それができないのであれば、そんなプールで泳がせないこと・あるいは泳がないこと。今回の大牟田市の事例がどこまで報じられたか私にはわかりません。でも、学校当局に危機管理能力が欠落しているのなら、父兄は自分のこどもが通うプールについてチェックして欲しい。事故が起きて悔やんでも遅いからです。

なお、今回のプール事故は友人からのメールで知りました。ご連絡下さった方に感謝いたします。

(追記)2014年7月にまた事故が発生しました。