正しく怖がる? 避難基準の違い(改訂版)

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次に掲げる2つの表を見て下さい。チェルノブイリ原発事故の後、ウクライナやロシア等が行った対応と、今回日本がしていることを比べてみましょう。日本政府がいかに被曝した人たちのことを顧みていないか、よくわかります。

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まず1つ目の表は、チェルノブイリ原発事故の後、ウクライナが作った法律による避難基準。

(出典は「チェルノブイリ事故による放射能災害」今中哲二編(技術と人間 1998)

それぞれのゾーンはセシウム137やストロンチウム90等による土壌の汚染度によって区別され、被曝線量はそれに応じて想定されるものです。

土壌汚染の数値を被曝線量に換算するにはいくつかの仮定と複雑な計算、それに実際の土地利用形態に基づく実測値などが必要です。上表にある被曝のミリシーベルト値は、チェルノブイリ原発周辺に関しての換算になります。

なお、ベラルーシやロシアではウクライナとは区分けと被曝想定量が少し異なっていますが、ウクライナ規制でだいたいの雰囲気は掴めます。

2つ目の表は、日本政府(文科省)が東電福一原発から放出される放射性物質による累積線量を計算して公表したもの。福島での土壌汚染の程度を測定しないと詳しいことは云えませんが、ウクライナ等の被曝水準をそのまま適用すると、下表中の福島市や郡山市等でも「移住義務ゾーン」。

(毎日新聞 2011/04/26より)

住民がこのことを理解した上で、なおかつそこに住みたいというのは有りだと私も思いますが、はたしてそこまで理解しているのかどうか。いや、違うな。こういう比較や理解するための材料を提供していない当局の姑息さこそ、問題にすべきなのでしょう。

当局や当局におもねる学者連中のいう「正しく怖がる」というのは、「ただちに危険ではない」ので、「安心して暮らしなさい」というものみたいですが、これがいかにマヤカシなのかは私も既に指摘してきた通りです。

とにかく、ウクライナ等よりも日本の方が住民を危険に晒していることがよくわかります。これはいったいどういうことなのでしょうか。かの国の方が民を大切にするのか。それとも日本という国がそもそも民の命を軽視しているのでしょうか。

原発はなぜ危険か―元設計技師の証言 (岩波新書)チェルノブイリ原発事故では田中三彦さんのいうところの「無知とヒロイズム」によって、悲惨な事故でもかなり早期に事態が落ち着きました。一方、東電福一原発はメルトダウンからメルトスルーへ移行し、まだ終息の目途が立ちません。海洋の放射能汚染(国際社会は海洋テロと非難している)もどんどん広がっているし。日本のメディアが平静を装い、もう終わったかのような雰囲気を作り出そうとしても、騙されてはいけません。

本当の「正しく怖がる」とは、まだ危険は去っていないことを理解した上で国や御用学者の言い分に警戒し、健康や命、生活を守るために必要な情報を入手することから始めることだと気づいてほしい。

もうひとつ。
まだ終わっていない事故の調査を今時から始めるなんて意味のあることなのかどうか。現場で必死に事故の拡大を防いでいる東電福一原発の所長を呼びつけて事故の話を聞くなんて絶対に止めて欲しい。そんなことは事態が落ち着いた後でないと、失敗学のシッパイと云わなければなりません。

補足追加: チェルノブイリとフクシマの避難基準の違い(補足)