マルコン その1 Régis & Jacques Marcon

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marconEX今回のフランス旅行で一番手間のかかる行き先だったのが、ホテル&レストランのRégis & Jacques Marcon 。こちらにしようか、ミシェル・ブラにしようか、悩んだあげくマルコンの方が行き易そうだなという単純な判断と、3つ☆獲ってまだ数年という勢いを買うことにしました。

まず、パリからTGVでリヨン経由サンテティエンヌへ。SNCFのHPでオンラインの売り切りチケットを購入していたので駅でのチケット購入や刻印の手間もなし。車内検札も車掌さんがQRコードリーダーでピカっ。実に単純でした。

サンテティエンヌからはタクシーを拾って南方面にあるサンボネ・ル・フロワという小さな町へ向かいます。小高い丘をアップダウンしながら50km弱・約1時間。タクシー代がばかになりませんが(苦笑)、レンタカーを使うコストと運転の手間を考えたら割安でしょう。着いた場所は小高い丘の上にある一軒家のレストラン。素敵なホテルも併設されています。

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部屋に入ると、まず目の前に開けた景色の素晴らしさ。これだけで心が洗われ、何か寛げそう。部屋もなかなかで、とくにお風呂がいい。でっかい円形バスタブに2人分の洗面台。2人で同時に歯が磨けるって、なかなか便利かも。

テーブルにはウエルカムシャンペンが既に冷やされていました。もし私たちの到着時間がずれていたら氷は溶けてしまっていたのかなぁ(苦笑)。そんな下世話は横において、まずは素敵な景色とお部屋をサカナに二人で乾杯。
そして、景色を楽しみながら、お湯を使い、用意されたバスローブをざっくり着てシャンペンを飲んでいると、いったいどこの国にいるのか、すっかり忘れてしまいそうな気分になってきます。ここで、私が調子に乗ってシャンペンをごくりごくり飲んでしまったのが失敗だったですが、それはまぁ後の話。

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marcond0さて、ディナーは19時30分にスタート。テーブルに向かう途中、オーナーシェフのマルコンさんがレストランの前で待ち構えてて、窓際の景色の良いテーブルを用意してますからどうぞと声をかけてきました。予約の時にそう希望していたことをしっかり覚えていての話でしょうが、丁寧な応対にまず感謝。食事への期待も高まります。

メニューは既に予約時に決めていました。この日はDécouverte début d’automne、つまり「秋の訪れの発見」と題したスペシャルメニュー。サンボネ・ル・フロワという町は土地柄いろいろなキノコが採れるらしく、それを活用したのがここのレストランの売りのようです。

日本を出る数日前に今回の秋メニューが発表されているのに気づき、前もって調べていたんですが、要するに旬なキノコが盛り沢山のお料理。普通ならフォアグラとかバールとかヴォーとか、そんな素材の名前が最初に来るところが、さすがキノコがスペシャリテのレストラン、キノコを中心にしてサカナやお肉を組み合わせていくという感じの構成です。さてさて如何なるものなのでしょうか。

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まず、アミューズいろいろ。細かい手が入っていてなかなか綺麗。味はそれぞれ素材の良さが感じられますが軽い作りで口にぽいぽい入っていきます。ちょっと食べるペースが早かったかなぁ。フロアは男女2チームに分かれ、フロア半分づつを担当しています。私たちのテーブルは若い女性陣のチームだったんですが、こちらがわからないのにフランス語で説明するのには参った。英語でお願いと頼んだら、ちょこちょこっと英語を使ってくれるのですが、すぐフランス語に逆戻り。フランス語のしゃべれないお客は、あまり来ないのかなぁ。まぁ、フランスのレストランで英語を要求するのも何だし、自分たちの英語だってかなり怪しいレベルなので他人のことを云えた義理じゃないんだけど、ね。

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Châtaignes et champignons
Transparence de crème de châtaigne, omble chevalier confit aux épices de sapin, champignons crus et cuits.

さぁコースの1皿目は、キノコとクリ。左からキノコのムースにクリクリーム載せ、真ん中はキノコの和え物、右は小石の上に乗せたイワナのコンフィ。特筆すべきはイワナの火の遠し加減。素晴らしい。びっくりするほど美味しかった。あとはどれもキノコ味たっぷりで、キノコ好きには堪らないでしょうね、きっと(私にはそれほどでもないのが残念)。

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Sparassis crépu (sparassis crispa) Pot au feu de foie gras de canard au sparassis crépu, bouillon de chou aux herbes à découvrir.

2皿目。火を通したフォアグラを団子状にしたものと花びら茸にハーブのブイヨンソースを合わせたもの。味は悪くないんですが、エッジが効いているわけでもないし、花びら茸の味が他のキノコとどう違うのか私にはわかりませんでした(困ったね)。
改めて写真をみると思うのは、このお皿は秋の木陰の地面からキノコが出てくるような雰囲気を描いたものだったのかも。でも、景色をそこまで楽しむような味わいにはなっていなかったなぁ。

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Cèpe (boletus edulis) Le cèpe rôti au lard en feuille de châtaignier, sabayon au goût grillé.

3つめはセップ茸。ベーコン巻と栗の葉を巻いたもの。添えられているのはサバイヨンソース。でも、ソースが結構塩辛い。それがベーコンの塩に重なり、よりきつく感じます。フランスではキノコって塩辛味が普通なんでしょうか? だとしたら私には無理だなぁ。

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Trois chanterelles
(Cantharellus cibarius, lutescens, tubaeformis)
Filet de rouget en bouillabaisse de chanterelles.

次に出てきたのは、ヒメジです。もっともタイトルは3つのシャントルッレ茸で、ヒメジは従。香りがアンズのようなので日本ではアンズ茸っていうそうですが、このお皿にはその3種類を使っているらしい。

これ、ヒメジは良かったんですが、これまたキノコの味付けがちょ~塩辛くて私たちは食べられませんでした。塩辛いキノコ料理ってフランスでは定番なのかなぁ。他のお客さんは問題ないんだろうか、そんな感じです。

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Craterelle (Craterellus cornucopoides) Thé de champignons noirs parfumé à la feuille de Tanaisie.

その次はテ。それもキノコのお茶。クラテルッレ茸を使ったもの。クロラッパ茸という和名があるように色は真っ黒。飲んでみると、まるで薬湯を冷やしてクリームを乗せたような味。上海でコーヒーゼリーと間違って注文してびっくりしたカメゼリーの液体版みたいな感じでした(苦笑)。まぁ消化促進のお口直しみたいなものでしょうかねぇ。

残念なことに、この辺で何だか気分がだんだん悪くなってきました。時差のせいなのか、ウエルカムシャンペンの飲み過ぎなのか、それともキノコに当たったのか。う~~~ん、困ったなぁ。

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Tous champignons « retour de cueillette »
Le canard que je cuisine en deux façons : la cuisse confite en cannelloni de pistaches, le filet rôti, fricassé de champignons et pommes au genièvre.

お肉は鴨。タイトルは「もう一度すべてのキノコを…」ですから、突き合わせやソースなどに今日出てきたキノコが全部入っていたのでしょう、きっと。食べ始めた頃、マルコンさんがテーブルにやってきて、セップ茸か何かのキノコを乾燥させたものをくだいて鴨肉の横に添えてくれました。これまた塩辛い粉ですが、お塩の代わりといえばそんなものでしょう。

ところで、シェフのレジス・マルコンさん、ほとんどフロアに出ずっぱり。ディナー開始からずっと。これでは本人が調理場にいないのが見え見え。息子のジャックさんらがキッチンを仕切っているから大丈夫というわけでしょうけど、何か変だなぁ。せめて塩加減くらいはチェックしてよね~と云いたかったけど、ぐっと抑えました(苦笑)。

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お肉までなんとか辿り着きましたが、気分は次第に悪くなり、お手洗いで顔を洗って出直そうとしましたが、それでもダメ。チーズは辞退し、デザートを少しだけと思い注文したものの、デザートが出る前にプレデザートがたくさん出てきたのを見て、気分の悪さはピークに・・・。

連れ合いにSOSを出すと、私の雰囲気をみて(文字通りの)ドクターストップ。プレデザート時点でディナーはオシマイ。デザートや食後のカフェ、プチフルールは食べず仕舞い。連れ合いに迷惑をかけたのが心残りでした。

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それにしても、キノコ料理って、こんなに塩辛いのが普通なのでしょうか? また、キノコに当たるってことがあるんでしょうか? だとしたら私はここの料理に向いていないようです。

もう1つ。マルコンのフロアサービスは若くて経験不足の感は否めません。パリの3つ☆に比べるとまだまだです。お皿を出し引きするだけで精一杯といった具合。食の進み具合やワインの残り量の把握、料理に合わせてワインをつぐタイミングなど、かなりの目配りがフロアサービスには必要なのだなあ、と再認識。

マルコンでは地元の若い人たちが一生懸命やっているのでイヤミがないのが救いですが、もっとレベルアップしないとお客は満足しない。それを一番知っているからこそ、オーナーのマルコンさん自身がフロアに出ずっぱりでサービスしているのかもしれません。まぁスタッフも若いし、向上心はありそうだから、これからに期待しましょう。5年後10年後にどうなっているのか、ちょっと楽しみです。

さて、体調が変でディナーを完食できなかった後ろめたさもあり、食後はちょっとブルーな気分でした。でも、ドラマはまだ終わらない。そんな気分を帳消しにするような、とっておきの出来事が数時間後にやってこようとはこの時点では全く知るよしもありません。いったいそれは何だったか。

と引っ張って次へ…。