安全柵があってもヤバイ! 流水プールやウォータースライダーの危険性

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もう4年前になりますが、埼玉県ふじみ野市で起きたプール事故の時、流水プールの意外な危険性について気づき、警鐘を鳴らしたことがありました。あの時は吸排水口にあるべき安全柵がなかったが故に女の子を吸い込み死亡させてしまったきわめて陰惨なもの。ところが、その悲惨さ残酷さに焦点が当てられてしまい、(私も心あるメディアの方々も)吸排水口の本質的危険性にまで踏み込んで広く問題化することができませんでした。

既に書きましたが、あの事件をあれこれ考えて出てきたことの1つが、吸排水口に安全柵があっても死亡事故の危険性があるということ。つい最近愛媛県今治市で起きたウォータースライダーでの事件はそのことの実例です(幸い死亡事故にはならなったのは良かった)。

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安全柵つきのプールで事故

(図は朝日新聞愛媛版7/22より引用)

事件を新聞などからまとめると、2010年7月21日、場所は愛媛県今治市湯ノ浦の市営温浴施設「クアハウス今治」のプール。被害に遭ったのは、同市内の小学5年生男子。ウォータースライダーで友人と遊んでいたところ、着水プールの排水口に背中が張り付き溺れ、一時意識不明の重体。幸い偶然居合わせた医師と救急救命士が蘇生を行い回復し、命に別状はなかったとのこと。

着水プールは幅2.4m、長さ5.5m、水深75cmで、被害者が張り付いたのはプールの底から5cm程度の壁面にある30cm四方の排水口。この排水口には安全柵があり、当初プール側は安全基準を守っているとしていましたが、柵の二重化はなされていなかったことが後日判明。被害者の生命が無事だったこともあり、大きなニュースにはならなかったものの、この事件はプール吸排水口問題の厄介さを浮き彫りにしました。というのも、安全柵では事故防止にはならないことを示したからです。

安全柵があっても危険なワケ

吸排水口に安全柵がなければ、穴の中まで体が吸い込まれてしまい、窒息したり、最悪死亡することになります。これまで起きたプール吸排水口事件の多くはそうでしたし、2006年にふじみ野市で起きた事件もこのタイプ。

でも、吸引力の源がプール水を循環させているポンプの力であることを考えるなら、穴の吸引力は安全柵の有り無しに関係ありません。要するに柵があろうとなかろうと吸引力はかかるということ。

もし、何らかの理由で安全柵に体が張り付いてしまい、開口面積の一部を体で塞いでしまうと吸引力は異常に大きくなり、張り付いた時の姿勢にも因りますが呼吸ができなくなったり窒息してしまう危険性も出てきます。必ずしも体全部が穴の中に引き込まれなくても事件は起きるというわけです。

たとえば、安全柵の柵間隔が広すぎると体の一部が吸い込まれてしまいますし、場合によっては頭やお尻がすっぽり嵌り込んでしまい、窒息したというケースも過去にありました。

それ以上に厄介なのは柵ではなくパンチ板のような安全柵。その問題が明らかになったのが、2006年730に群馬県伊勢崎市の市営プールで、遊泳中の小学6年生男児2人が吸水口に張り付き動けなくなり、「監視員が数分で救出し、2人は腹部などに内出血が見られた程度で、そのまま帰宅した」(読売新聞2006年8月5日)とのこと。このプールの排水口は多数の穴が空いたパンチ板で覆われていましたが(つまり安全柵はあった)、その穴の少なからぬ部分を体で覆ってしまったために、水の吸い込み面積が著しく減り、異常な吸引力が働いたものと推察できます。

もうおわかりでしょうか。安全柵がついていても、そこに体が張り付いてしまえば場合によっては抜け出せなくなり、最悪死亡事故に繋がってしまう危険性があるということなのです。今回の今治市のプール事件でもそれが明らかです。でも、安全柵があるから大丈夫とタカを括っているプール管理者がほとんどでしょうから(開口部の形状や形式には安全基準がないことを知らない人がほとんどでしょうから)、問題は日本中どこにあるといっても過言ではありません。

流水プール・ウォータースライダーには要注意

この問題をさらに面倒にしているのが流水プールです。

普通のプールなら浄化用に循環させるだけのポンプですが、大型の流水プールや今回のウォータースライダー用に水を循環させるポンプは比較的大きなものが多く、その吸引力も大きくなります。したがって、安全柵をつけるだけでは吸排水口の危険性をなかなか排除できません。今大事故が起きていないとしたら、それはプール監視員の入念な監視の効果なのか、単なる偶然か、であると云ってもよいでしょう。ハードウエアとしての安全対策が十分であるとは云えないのでは悲劇はまたどこかで起きてしまいそうです。

安全柵の形状や形式、とくに開口面積についての安全基準はありません(2006年以降新たに作られているのなら誰か教えて下さい)。大きな開口ではヒトを吸い込み易くなるし、小さな開口では吸引力が大きくなります。これを基準化するのはきわめて難しい。安全柵に遊泳者が近づけないような構造上の二重化設計が要るのではないかと私は考えますが、プール容積が減るような設計には管理者もオーナーにも抵抗が強そうです。

おそらく安全柵があってのプール吸引事故の場合、事件が起きても国の基準がないからと言い逃れするプール管理者が続出するでしょう。今回のプール事件が全国的に大きな話題にならなかった背景には、TVや新聞系列の大型流水プールが今まさに稼ぎ時であることとも無縁ではないでしょう。

あなたやあなたの家族の身を守るには流水プールやウォータースライダーの吸排水口がきわめて危険であることを認識し、そこには決して近寄らないことしか対処策がなさそうです(でも、実際的にそれは難しいので、私ならそういうプールにも行きません)。