2019年 道東6 アイヌのカムイ

.Travel & Taste

今回の道東旅行のおかげである漫画を読むことになりました。「ゴールデンカムイ」です。なぜかといえば、訪れたアイヌ資料館に主人公らの等身大の模型があり、「この漫画を応援します」とのメッセージ。公的施設が漫画作品を応援するというのがちょっと驚きで、帰宅後すぐに販売済み単行本を読破しました。

・・・

美幌峠から屈斜路湖を眺めた後、摩周湖の展望台へ向かう途中で立ち寄ったのが、湖畔の弟子屈町屈斜路コタンアイヌ民俗資料館。弟子屈は地名の「てしかが」、コタンはアイヌ語で居住地のこと。要するに、屈斜路湖畔の弟子屈のアイヌ居住地(村)にあるアイヌの民族資料館という意味。

ここにはアイヌが使っていた民具などが展示されていますが、とくに鹿の膀胱で作った水筒にはびっくり。考えてみれば合理的な活用方法で、動物と一体にモノを考えてきたアイヌならではの発想と感心しました。

次に面白かったのが紹介ビデオ。アイヌ衣装を着た受付の女性が「お時間あれば是非」とのことだったので、夫婦でじっくり見ました。ビデオの中の案内人は宇梶剛士さん。お母さんがアイヌ系という縁もあるそうで、アイヌのことをいろいろ紹介していました。宇梶さんといえば、最近は朝ドラの十勝方面で登場するのは、アイヌの縁もあるのでしょうか。

それよりも興味を持ったのが、「この漫画を応援します」と漫画の「ゴールデンカムイ」を紹介していたこと。主人公のアシㇼパ(リは小文字です、念のため)や不死身の杉元の等身大モデルが置いてあり、公的機関が漫画を推奨しているのです。北海道とアイヌとの密接な関係を反映していることが伝わってきました。

資料館にあったメッセージは正確にいえば、「北海道はゴールデンカムイを応援しています」。アイヌをとりあげた漫画は「シュマリ」他いろいろありますが、この漫画で登場するアイヌ関連話題がかなり正確だから、だそうな。また、この漫画は北海道で人気らしく、とくにアイヌに縁のある場所では是非うちも漫画の舞台にと誘致合戦までしているとか。

そういう話を知るとこりゃ一度読んでおこうということで、帰宅後すぐに現在18巻まで出ている漫画を読破。漫画のストーリーは別として、アイヌの文化や食事事情も登場するのでなかなか面白い。昨年度の手塚治虫文化賞のマンガ大賞も受賞。あ、そうそう、先の鹿の水筒も漫画に登場します。


ついでながら、この漫画のアイヌ語監修者の中川裕さんによる唯一の公式解説本が「アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」」。「ゴールデンカムイ」で読み解くアイヌ文化ではないところがミソで、漫画が身近に感じられる本に仕上がっています。こちらもお薦め。

この解説書を読むまで、アイヌ語のカムイとは神のことだと思っていたらそうではなく、物質的なものまで含めた私たちの、いわば環境のことだと知りました。知らないこと多かりし。旅に出ると知識が増える、それも予想もしないきっかけで、という貴重で嬉しい経験をくり返す次第です。

摩周湖は噂通りの霧で視界がひらけません(残念)。