若おかみは小学生!

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ひょんなことで表題の映画を観ました。原作は20巻あるそうですが、漫画映画になったのは昨年の夏。そのパンフレットに美山荘の女将さんが自身の仕事についての文章を寄せていることを知り、遅ればせながら先日観たところ、なかなかのモノでした。

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「若おかみは小学生!」は令丈ヒロ子・亜沙美両氏の原作&イラストを昨年高坂希太郎監督が映画化していたもの(TVアニメは別)。子ども向けかと思っていたら、これがなかなか侮れない内容でびっくり。

なぜこの映画に興味を覚えたかというと、映画化にあたり京都の美山荘を舞台コンテに採用したこと、おまけに公開時のパンフに美山荘の女将さんが「おもてなしの極意」なるものを寄せていたから。こりゃ一度観なきゃアカンねと先日レンタルして鑑賞しました。

話の筋や内容は他のサイトなどに譲りますが、美山荘との関係でいえば、旅館の玄関付近やお部屋、そして縁側などなどはたしかに美山荘がモデルになっています(お風呂は有馬温泉の御所坊がモデルです、念のため)。

高坂監督はこの宿を宮崎駿さんから薦められたとのこと。それもラセター(ピクサーの元CEO)を連れていったらラセターさんがいたく気に入ったとの話を聞いたからと解説しています。その判断は正解でした。だって、ホンマに素晴らしい。というのも、料理の美味しさは云うまでもなく、実に気持ち良くゆったりまったり過ごすことができるから。

個人的に一番素晴らしいと思うのは、日本を代表する宿でありながら(代表する宿だからこそ、というべきところですが)客を身分や社会的地位で区別しないところ。この手の宿では文豪や著名人が泊まったことを売りにするのに、そんな話は女将もスタッフも誰一人として口にしません。客は皆誰も同じ、というポリシーがあるのでしょう。映画の中で「春の屋は誰も拒まない」というのがキーワードになっていますが、まさしくそれを具現化しています(もちろん宿代は要)。

映画の中で出てくる玄関前やお部屋そして縁側のシーンでは、まるでそこに自分もいるかのように錯覚を覚えたくらいで、宿の雰囲気をうまく描き出しています。監督曰く、美山荘を見て畳の向きまで注意したとのことですからさもありなん。よく描き込まれてますね〜。

とくに私が感心したのは襖の絵。映画の中で登場する襖が美山荘にあるのかどうかは私にはわかりませんが、美山荘ならあるだろうなぁと思わせるくらいしっくりしていました。高坂監督もおそらく宿の襖絵に感動したからだと思いますが、監督や絵を描いたアニメータさんの芸の細かさに感服です。

そういえば、京都の地下鉄の吊り広告に「日本に京都があってよかった」なるものがあります。それをもじっていうなら、「京都に美山荘があって良かった」と私は云いたいくらい。その良さをうまく漫画のカタチで昇華させた高坂監督に大きな拍手。美山荘に行ったことのある人ならもちろん、行ったことがない人でも宿の片鱗を味わうことができるでしょう、映画の脚本も実によく練られていて見応えあり。お薦め。