オワコン 3 本

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最近本を読む人が少なくなったとの話をよく聞きます。街の本屋さんはどんどん廃業しており、全国の書店数はガタ減りらしい。いろんな理由はあるのでしょうが、多くの人が印刷の本を読まなくなったのが大きな原因です。ネットで調べ事をするのが当たり前の世代にとっては、デジタル本ですら必要としていないから。また雑誌はコンビニで買える時代ですから、街の本屋さんでは売れません。そうして、本も本屋もオワコンになってきたというわけ。

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私が『あぶない水道水』を三一書房から上梓したのは1996年。新書版でお願いしますと申し入れたら編集者曰く、著者からは「単行本で出してくれ」と云われるのが普通だがなぜと問われたので、「新書の方が本屋において貰える期間が長くなり人目に触れる機会も増えるから」と応えました。まだまだ出版業界が元気だった頃の話。

ちょうどその1996年こそが日本の出版業界の売り上げピークの年でした。当時の販売金額は1兆931億円、それが2017年には7152億円というのですから35% 減、つまり3分の1ほど販売高がなくなっています。おまけに書店の数も90年代に比べると半減で、凄まじく縮小中。

一時期、雑誌は売れているという話も聞きましたが、それもまた過去の話。1996年の販売金額が1兆5633億円あったのが今では6548億円で半分以下。書籍よりも少ないという有様です。本も雑誌もどちらも売れないコンテンツになってしまったのです。(出典:星野 渉「日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由」(東洋経済)

原因ははたして本や雑誌がデジタル化されてしまったからでしょうか。話はそう単純じゃない。だって、デジタル化してもホンマに売れているかどうかわからない。それよりも読む人そのものが減ってきたことに根本的な問題がありそうです。理由は明らか、ネットで検索するのが当たり前の時代の副作用です。

さらにいえば、単にネットだけの問題でもありません。コンビニの台頭、アマゾンなどのオンライン書店の登場、そしてその背後には取り次ぎと街場の書店との利益の取り合い等々で、書籍販売というアキナイがうまく回っていかなくなった、というべきです。

この状況が今後好転するとは思えません。よほどの有名作家や有名人でない限り、本を出版しようという酔狂な出版社は出てこない。だって儲からないから。

じゃ、これから本を出したい人はどうしたらいいのか。まず考えられる方法はネットで作品を発表し、人気が出たら出版社から声がかかるかも・・と、期待するのがささやかな対応でしょうか。

一方、ネットなら無料公開が基本。だって優れた無料コンテンツが山ほどあるのに有料のものが選ばれる可能性は有名人を除けばまずありません。幸運にも印刷本の出版まで辿り着いたとしても、出版社の経営能力が減退している今、自費出版を勧められたり買い取り条件などを細かく提示され、お金がない人には厳しい世界になることでしょう。世知辛い時代だ。

シンホリカリポスという名前の不思議な花