こんな写真が撮りたいっ!

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LFI最新号の案内にびっくりするような写真あり。他人はどう思うかいざ知らず、私には「あぁ、こんな写真が撮りたいっ!」というのが第一印象。少し心を落ち着かせ、いったい誰の作品なんだと眺めてみると、ルイス・キャロル。えっ、と二度目の驚き。タイトル見ると「アリス・リドル」ですから、まさしく「不思議の国のアリス」のモデルとされた少女を撮ったもののようです。それも1858年。今から160年も前とは、3度目の驚き!。1枚の写真にこんなに次々と驚かされたのは始めての経験でした。

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LFI(LEICA FOTOGRAFIE INTERNATIONAL)の2018年1月号に、「Alice Liddell by Lewis Carroll, 1858」なる写真が紹介されていました。雑誌の説明によると、ロンドンのNational Portrait Galleryでは今年の3月から5月に「ヴィクトリア朝の巨人 芸術写真の誕生」と題して、写真が生まれた当時の4人の写真家のポートレート写真を展示するらしい。

その中の一枚がルイス・キャロルの「アリス・リドル」。キャロルとはペンネームで、彼は作家として有名ですが数学者でもあり写真家でもあったらしく、こんな写真を撮っていたなんて、私はつい昨日まで知りませんでした。

ガラス乾板に定着された写真には横を向いた少女が1人。名前からわかるように、「不思議の国のアリス」のモデルになった女の子のようです。160年前ですから、カメラもレンズも現代のに比べると随分性能は落ちるはずなのですが、それでもこの写真の訴求力はでかい。

この写真は時間を超えています(そうです、これがアートの条件の1つ)。本当に160年前の写真なのでしょうか。髪の毛や衣服の解像感はもとより、目つきや表情のビビッドさは当時の他の写真とは全く異なり、古くささを感じさせません。

当時の写真は露光に時間がかかるのでその間動きを止めておかねばならず、イスの後ろに支えを作ったり、ヒモで体を縛ったり等といろんな工夫をしたという記述を読んだことがあります。この写真ではどうだったのか。向かって左側のイスや衣服のボケは動いた結果なのでしょうか。

理由はともかく、現代レンズ&カメラではこうは写りません。だって、設計者やメーカーは画面の端から端まできちんと写るのが良いレンズ&カメラだと考えているからです(被写界深度つまり奥行き方向のボケの話ではありません、念のため)。

でも私たちの目は端から端まで綺麗に同じように見えているかといえば、否。むしろ注意が集中した部分以外はたいして見えていないのが普通です。だから、私にすれば画面の端々まできちんと写るというのがちょっと違和感が大きく、現代的なレンズやカメラ、とくに国産のが性に合わないのがこの点です。そのことを明示的に理解できたのはLEICAのレンズを使ってからでした(もちろんこの写真とは関係なしで、余談です)。

この写真を最初に見て、「あぁ、こんな写真が撮りたいなぁ」と思ったのはそんないろんな思いが詰まっていたからか。先に紹介した木村伊兵衛さんのタンバールで撮った女性の写真をみた時の思いといっしょ、やっぱりタンバールを手に入れるべきだろうか。花影S1でどこまで迫れるのだろうか。そんなことを考えてしまいました。

それにしても私にはびっくりの写真。こんなのがまだ埋もれていたんですね〜。