15年の時を経て

.Travel & Taste

先週末は吉田山麓の友人宅へ。ご自慢のレシピでフレッシュな本鴨を鍋で堪能し、とっても幸せな時間となりました。合わせたお酒は日本の泡でGRACE(珍しい!)、それにこちらが持参したピション・ラランド03とラフィットロートシルト03の3本。どれも美味しかった。とくにラフィットは飲み物というよりアートで、口にふくむと異次元の別世界へ誘われるような感じ。いやぁ参った参った。

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フレッシュな本鴨肉は見るからに美味しそう。

15年という歳月は短いようで長く、長いようで短い。まるで禅問答ですが、要するに各人によって年月の感じ方が異なるということ。あなたはこの15年間どんな出会いや経験をしましたか? 

私はといえば、地元の首長選に出たり、埼玉ふじみ野市のプール事件で数日間TV画面でバタバタしたり、はたまた心臓の冠動脈が詰まりかけてヤバイ目に遭ったりで、どれも2003年の時点では予想できませんでした。

だから、これから15年先を読めと言われても当たりそうな感じがしませんが、確実なのはどんなものでも15年分の経年変化を起こすということ。たとえば、ワイン。15年あれば良いワインはその分熟成します。問題なのは「良いワイン」とは何かですが、話が長くなるので省略。

グランヴァン(偉大なワイン)というのは厄介な飲み物です(注1)。市場に出てきた時にはタンニンが渋くて、とても飲める代物でありません。最近は早飲みワインが出回るようになりましたが、だいたい5年〜10年あるいはそれ以上寝かせる必要があるのです。

今回飲んだワインの話をしましょう。2003年のワインといえば、既に15年の年月が経っていますが、はたして飲み頃なのかどうか。ロバート・パーカーの本ではラフィットで2010年〜、ピション・ラランドで2008年〜となっていますから大丈夫なはず。でも、予想は予想であって飲んでみないとわかりません(注2)。

でも、今回は当たりでした! ラフィットはボルドーらしい香りが立ち、綺麗に酸が抜けて渋みは全くありません。そして、ベリー系の味わいがきわめて上品で素晴らしい。飲み口は柔らかく、アフターも十分。文句なし。ピークを越えた感じはしなかったのでまだまだ熟成するでしょう。

一方のピション・ラランドはこれだけ飲むなら美味しいボルドー。でもラフィットと比べると、香りと味わいに固さを覚えます。現在価格が一桁違うので仕方ないといえばそうなんですが、少し哀しくなりました(だってピション・ラランドって私の好きなワインの1つだから)。

現在価格は私の購入時の5倍程度。今の値段なら私は買えませんし買いません。
ワインは世間の評価が定まる前の安い時に仕入れることが肝要です。株といっしょ?!

思うに、ラフィットは既にアートな領域。いわば飲み物のカタチをした絵画みたいなもの。香り・味わいしっかりで鴨鍋にも負けません。かといって自己主張するわけでもなく、なんでもこい、どんなのにも合わせるゾ的な大らかさ。パーカーさんが褒めるのも宜なるかなですね〜。

それにしても、15年の歳月がここまでワインを熟成させたのかと思うと、なんか感無量。こんなのを一生のうちで何本飲めるのでしょうか。これだから美味しいワインはやめられませんね。また次の10年先を目指して寝かせ甲斐のあるものを手に入れようと考え始めたところです。

念のためにいえば、グランヴァンなんて飲んでも飲まなくても人は生きていけます。でも、熟成したワインの美味しさを知っていると知らないでは世界の見え方が違う(かもしれない)。

第一に完成までに長い準備と熟成期間を要すること、第二にそれに期待してキープすれば素晴らしい果実が得られるかもしれない・・・って、まるで人生の歩みと同じじゃないですか。

熟成ワインは過去にいくつか味わうことがありましたが、今回のラフィットは別次元。そんなワインを飲みながら、今日まで生きてきて良かったなぁと心から思った晩でした。美味しい鴨鍋の席を用意してくれた友人夫妻に感謝します。

(注1)
ボルドーのグランヴァンでトップ5といえば、ラトゥール、マルゴー、ムートン・ロートシルト、オーブリオンにラフィット・ロートシルト。これはメドック地域の格付け認定です。そういう区分けとは別に、新興のルパンとかペトリュス、あるいはヴァランドローなんてのもありますが、それらは生産量が少ないこともあり、先の五大ワインよりも価格が高くなることがまま。

(注2)
ワイン評論家のロバート・パーカーがボルドーワインの格付けをしています。パーカーポイント(PP)で100点満点が最高。ラフィット03はほぼPP100(年によって少し動く)。パーカー本では格付け以外に飲み頃情報が出ているので、ワイン飲みにとっては有り難い(でも、評価にはあれっと思うモノあり)。