うつヌケ

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最近うつな話題多しの世の中。うつになるのは真面目なせいだ、そんなに薬飲んだら余計にひどくなるのではないか、薬に頼る前に食生活を見直せ、とうつな友人に云うのですが、本人からすれば薬でも何でもいいから助けて欲しいというところでしょう。しかし、薬で解決できる問題なのでしょうか。

今回紹介する本のタイトルは『うつヌケ』。本の著者は田中圭一さんで中身は漫画仕立て。うつがヌケるとは何ぞや? 本のタイトル横にあったサブタイトルが「うつトンネルを抜けた人たち」とあったのを見て、なるほどと思った次第です。

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うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち

最近うつな人が多いらしい。新型うつなんて言葉もあるみたいですが、メンタルな不調って誰にもあることだし、今に始まったことじゃない。そんな「うつ」がある種のトレンドのように扱われるのは、おそらく世の中が効率主義に染まってギスギスしてきたせいではないか、と思っている私です。

そのうつ、病気自体はメンタルなものですが、精神科で出される薬で良くなるものなのでしょうか。私はそうは思いません。というのも、一時的に薬で抑えても、根本のところが何か、それを改善するにはどうしたらいいのか、というチェックを怠れば何度も何度も繰り返すからです。

メンタルな健康を悪化させる原因とは何でしょうか。遺伝でしょうか、それともフィジカルな体調不良でしょうか。どちらもあるでしょう。でも、個々の人にとっては一般論よりも個別論。自分の不調がいったい何に起因するのかを考えた方がベターです。

この本は著者自身の話から始まります。ご自身もひどいうつに悩まされ、でもあるきっかけで暗いトンネルのような場所から抜け出すことができた。曰く、自身の原因になっているのは「はげしい気温差」だった、その付き合い方さえわかれば随分気分が楽になったとのこと。だから、その経緯と方法を紹介しようと考えたらしい。

それから、いろんな方々を取材して、うつを患った人たちがどうやってどれを乗り越えたか、あるいは乗り越えようとしているかを紹介しています。登場するのは著者の周囲の方々のみならず、大槻ケンジさん(ロッカー)、内田樹さん(仏哲学)、宮内祐介さん(SF作家)、熊谷達也さん(作家)、一色伸幸(作家)等々。うつヌケの方法も人それぞれだし、へぇ〜あの人もうつなのか〜って共感を呼ぶかもしれませんね。

私思うに、メンタルな不調はホルモンバランスに大きく関わっていますので、著者の田中さんが「はげしい気温差」でおかしくなるという話はさもありなん。また、鉄などの栄養成分が不足すると、ひどいうつになるという話は医学的に指摘されていますから(追記)、食生活はかなり重要な要因ではないかと思う次第です。この本で紹介されている例でも投薬は必ずしも最適解ではないことがよくわかります。そういう意味で、この本の指摘はおそらく著者が考える以上に、きわめて合理的ではないでしょうか(お薦め)。

(追記)女性はとくに鉄分が不足します。そういうケースをテケジョ(鉄欠乏女子)と称して危険性を指摘する医者もいます(後日紹介)。また産後うつはその極端な例であることも既に指摘されています。