土壁 竹小舞 下地窓

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先日美山荘に泊まった折、改めて自宅のことを考えました。というのは、拙宅も土壁で高野槇のお風呂を採用しているから。もちろん、目的やコンセプトは違いますし、美山荘のコストは桁違いですから仕様そのものを比べてもあまり意味はありません。ただ、美山荘で寛ぎながら自宅の土壁や木風呂を選んだ経緯や施工時のこと等々を改めて考えてみた次第です。

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美山荘の下地窓。骨格の葦が美しい。

まず土壁。文字通り、土を塗った壁のこと。美山荘の土壁は京壁です。それも戦前のものが今尚しっかり活きていることが何かしら嬉しくて、ずっと壁を眺めていても飽きませんでした。やはり、時間とともに味わいが出てくるものは素晴らしい。土壁という技法は後世に残りますね、きっと。

そんな感傷の中で、自分の家を設計した時に土壁経験のある建築家の方々に教えを請うたり議論したり、自分自身でも悪戦苦闘し、ない知恵を絞った思い出が甦ってきました。


拙宅が工事業者を探す時の条件の1つが「土壁を作ることができること」。でも、これがなかなか難関でした。20年前にそうだったから、今なら尚更厄介なのではないでしょうか。

有田宅の竹小舞。割竹を棕櫚縄で結わえました。

土壁が廃れていったのは煎じ詰めれば、施工に時間と手間そしてお金がかかるから。施工期間を短縮したい、コストを下げたいという業者と施主双方の利害が一致した結果といえばその通りでしょう(注)。

でも土壁は断熱性が高く、熱容量が大きいので温熱的にはきわめて合理的です。エアコンなしの家を現代で実現するには土壁が一番だと私は考えたのはそんな訳でした。もちろん、昔の土壁のままなら隙間風が通るから寒いし、湿気対策を怠るとカビが生えてくるという欠点もありますが、これらはちょっとした工夫で解消できます(現在18年居住中の私の経験から)。


竹組みを見ていると鉄筋の番線結束みたい。

土壁の下地は小舞といいます。竹や木あるいは葦を格子状に組んで骨格とするわけですが、下地窓というのはその小舞の一部を土を塗らずアラワシにすることで、下地を見せた状態で作った窓のこと。宿の若い仲居さんがお部屋の説明をする際に、この部屋は未完成のままにしたモノがありまして・・・と言っていたのが、どうも「下地窓」のことらしい。

実は拙宅でも下地窓はどうかと工務店に持ちかけたら、あれは穴あきなので寒いですよと諭されたことを思い出しました(たしかに)。でも、茶室などの数寄屋造では本当の下地小舞じゃなくて、その部分だけ皮付きの葦などで作っていてるわけですから、その上を断熱ガラスで覆えば大丈夫ではないでしょうか。美山荘のを見ていて現代でも作れるゾ使えるなぁと確信しました。


宿の京壁を眺めながら、そんなことをあれこれ考えた次第です。これから家づくりを目指す人には、土壁という類い稀な工法がこの日本にあること、その技法の現代的な意義や性能は世間の考える以上で、古い数寄屋造の建屋だけに使うのはもったいない、そう思っていただければ幸いです。

(注)土壁の一番の問題は施工期間が長くかかること。昔なら表塗りを1年くらい放置してから裏返す(裏側を塗ること)のも当たり前だったそうですが、現代でそれを真似るのは大変。でも、拙宅のように1年くらいで施工するなら大手ハウスメーカーのプレハブ壁よりも安くなるかもしれません。要は施工可能業者を見つけること、これが第一です。