非塩ビ給水管の設計

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   およそ水道水質に関わったことのある人だったら、赤水問題を知らない人はいないはず。私自身に持ち込まれる水道水関連のトラブルでも赤水問題が最も件数が多く、水道水質のクレームで最も一般的なものだと言ってもいいでしょう。

 赤い色がつくのは鉄管が原因であることは誰でもわかるのに、住宅建設を行う時に抜本的な対策を講じたり赤水が出ないような配管設計をしているとは到底思えません。なぜか? 私思うに、建築関係者とくに設備業者が赤水の出ないような配管設計を知らないから、あるいは知っていても採用しないから、ではないでしょうか。
 
  赤水は給水管の老朽化によって管素材の鉄(鋼、鋳鉄、鉄等)が溶け出すことによって発生します。鉄を使わなければ話は簡単。でも実際の給配水を考える場合、とくに浄水場から各家庭への配水を考慮する場合には鉄製の管を排除することはできません。個人的には強度の高いポリエチレン管でかなりの部分を置き換えることは可能だと考えますが、大口径管ではまだまだ困難です。しかし、個別家庭内の給水管や集合住宅内の給水管を考える場合には鉄製の管を使用せず、ポリエチレン管、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管を使えばよいのです*。これらはすべて日本工業規格JISの性能基準を満たしており、給水管として使用することは理屈上可能です。理屈上と書いたのは、水道関係当局が(ごくごく一部を除いて)それら管材の使用を不許可にして排除してきたため、ほとんどの人が赤水が出るような管材でしか工事ができなかったという事情があるからです。

     なぜそんなことになったのか。いろいろ理由は想像できますが、それはそれとして、ここ数年来の水道法の改正によって、給水装置の使用は水道当局の許可を必要とせず届け出だけで済むようになりました。もちろん、なんでもかんでも自由に使えるというのではなく、しかるべき性能を満たすものならオッケイというものですが、先のJIS規格品なら当然合格です。ところが、水道当局の中には法改正を未だに理解していない向きも多く、先のJIS規格品を許可しない等と迫ってくる所もあるかもしれません。その場合には、改正水道法を調べてから指導して下さいと対抗するもよし、あるいは指導の法的根拠を文書で下さいと要求するもよし(私は不勉強な行政に対してそう対峙しました)。相手側もちゃんと調べれば法的根拠がないことに気づくはずです。
 
 さて、ポリエチレン管、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管による設計はどうしたらいのか。大きく2つの設計方法があります。ひとつは従来型の分岐継ぎ手工法、もう一方はサヤ管ヘッダー工法。分岐継ぎ手工法は説明するまでもないので省きますが、サヤ管ヘッダー工法とは、分岐先を設けたヘッダー部分から1対1対応で各給水栓まで繋ぎ、その配管をサヤ管で保護しようという方法です。管路途中には一切の分岐や継ぎ手を作らないため、途中での漏水も心配する必要がなく、途中での継ぎ手工も必要ありません。具体的にはサヤ管ヘッダー工法の施工マニュアルを参考にして下さい。配管設計ができる人なら、管設計そのものには難しいことはありません。
 難しいのは、私自身の経験で言えば、壁や床との取り合いや納まりをどうするかという問題だと思います。塩ビ管であれば90度に曲げられる所でも樹脂管ではRを十分とらないとカーブさせられないため、床に切り込みを入れたり壁の納まりで調整したりする必要が各所に出てきます。コンクリート工事であれば適当に曲げておいて埋め込むという手が使えますが、木造工事の場合、塩ビ工事ではほとんど無視できたR部分の処理は施工者のアイデアや腕にかかってきます。これは個別具体例で議論すべき問題であり、実例を積み上げていかないとまだまだ難しい課題のようです。
 また、ヘッダー部及びヘッダー配管との繋ぎ目部分の凍結防止対策も考えねばなりませんが、メーカーマニュアルでは検討されてもおらず、これまた個別戸建てサイトでの手探り対応となります。拙宅では木製箱型囲いを作って覆うことを予定していますが、これもいろんな方法がありそうですね。
  
最後に、 塩ビ給水管を非塩ビ管に変更する場合の利点について整理しておきましょう。
 
 1)赤水がほとんど発生しない
2)サヤ管ヘッダー工法であれば途中経路の継ぎ手がないため 漏水の心配がほとんどない
 3)塩ビ管からは有害な安定剤や可塑剤が溶出するが、 ポリエチレン管の場合には心配する必要がない
 4)廃棄・焼却になった場合、ダイオキシンやハロゲンガスを生成しない。

 3)4)は説明する必要はありませんが、 3)の方が重大で、4)の理由は付けたしのようなものだとご理解下さい   (主たる理由ではないという意味です)。
 

*ステンレス管や銅管はまずコスト的にお薦めできません。曲がり管、継ぎ手などの約物が異常に高価です。また、水道水のpHによっては金属の溶出が受忍限度を超える可能性もあります。ステンレスもいろいろな種類があり、腐食に強いものはかなり高価です。私なら使いません