飲料水の水質監視項目の追加

Water

  水道関係の方々には旧聞に属することですが、昨年12月17日に厚生省から発表された資料によると、水道水質に関する基準を見直す検討を行った生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会の報告を受け、厚生省は監視項目の追加等所要の法令等の改正を行うとのことでした。

 追加された項目は、亜硝酸性窒素、ウラン、ベンタゾン、カルボフラン、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)及びトリクロピル(ベンタゾン以下4項目は農薬)の6項目。さらに、ほう素、ジクロロ酢酸、クロロタロニル(TPN)、プロピザミド、ジクロルボス(DDVP)及びフェノブカルブ(BPMC)(クロロタロニル以下4項目は農薬)の6項目については監視項目の指針値を改定することになっています。中には緩和されているものもあり、細かい内容は厚生省の発表資料を参照して下さい。

 厳しく言わせていただければ、水質基準の改定はええこっちゃと思うのは脳天気で早計です。注意して下さい。今回の見直しは水質基準の改定ではなく監視項目の追加だという点。水質基準と監視項目とは別物です。水道法で規定される水質基準は四十六項目のみ。快適水質項目や監視項目というのは法的規制力がない項目で、水道法四条でいうところの水質基準ではありません。水質基準でもない監視項目とはいったいなにか、詳しく知りたい方が拙著「あぶない水道水」でもお読み下さい。
 さて、いろんな有害物質が問題指摘されるのはそれ自体悪いことではありません。でも、水質基準で飲料水の安全性を担保しようという姿勢は、やもすればそれだけが金科玉条の手段になってしまい、本来水源環境の保全で対処しなければならないような問題を忘れ去ってしまいます。現実にそうじゃないですか。水源上流の産廃施設に水質基準や監視項目を適用して操業をストップさせたり改善させた例があったら、是非私に教えて下さい。基準を増やしていくのもいいければ、そのサンプリングや分析に係る手間や時間、費用はいったい誰が負担しているのでしょうか?まるで、分析屋さんのための改訂ではないかと言いたくなる時があるのは私だけでしょうか?水中に存在する有害物質の多さを想像するならば、水質基準重視はいつまで経ってもモグラ叩きゲームとなってしまいます。どうもそれがわからないのが厚生省やその取り巻き連中のようです。ここも前記の拙著で繰り返し指摘した通り。

 蛇足ながら、この監視項目にクロロタロニル(TPN)という農薬物質が入っています。有機塩素系の殺菌剤で、これを主成分とする商品にはダコニールなどがあります。最近ダイオキシンも含まれているということで問題になっている商品です。事もあろうか、ダコニールがTPNだと知らない某学者は「ダコニールは既に三十年も使用されてきて問題を起こしていないようだから安全」等という趣旨の発言を某所でしていますが、そうだったら、ほとんどの農薬は安全になってしまいます。
困ったこっちゃ(哀)。