コンパクト化道遠し 富山

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先週末からの連休で越後湯沢の「里山十帖」に一泊、その後富山に二泊。富山は2度目の日本料理「やまざき」と今回初めての南イタリア料理「シンポジウム」。どちらも素晴らしい味わいで記憶に残るディナーになりました。
でも、富山には少しがっかり。北陸新幹線開通に合わせてできるはずだった駅の南北通り抜けは未だできません。既に開通から3年目。地元タクシーの運転手さん曰く、あと何年かかるのかもわからないとのこと。いったいこの町はどないなっとるの?

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富山市は2012年にメルボルン等と並んでOECDのコンパクトシティの世界先進モデル都市の1つ。コンパクトシティとは、1970年代に始まる都市の郊外拡散を止める施策であり、「既にアメリカを除く先進国の多くが人口減少を迎え、人口減少時代に適応した地域社会のあり方として、今、世界の先進都市が取組んでいる」ものだそうです(出典は百瀬伸夫 「富山市のコンパクトシティはLRTから始まった」)。

富山市の理念や意気込みや良し。将来の人口減を考慮した街作りというコンセプトも素晴らしい。でも、能書きだけで実際の計画の進捗は芳しくありません。たとえば、2015年に北陸新幹線が開通する時に合わせて富山駅の南北が車も人も通り抜けできるはずだったのが未だその気配なし。

北側ロータリーにはタクシーもほとんど止まっておらず、夜に駅を抜けようとしたら野宿の人がたむろする地下道を延々と歩かなければなりません。尿臭いニオイもします。自慢のトラムも北と南で分断されているので乗換は面倒。こんな使い勝手の悪い駅前で恥ずかしくないのでしょうか。

駅南側を走るトラムと市電。便利なのですが駅北側とは断絶されているのが面倒。

昨年訪れた時にはすぐにも通り抜けができるような話も聞いたのに、どうやら県と市、それにいろいろな民間セクターの利権調整に手間取っているみたい。加えて、昨年表沙汰になった議員の公金使い込み(政務活動費の不正支出)で議会が開店休業状態になったことも大幅な遅れの原因の1つ。タクシーの運転手さん曰く、通り抜けにはあと3、4年はかかるんではないかとのこと、諦めの境地でした。一番の被害者は富山市民ですが、ここの市民は我慢強いのでしょうか。

市内で目立つのは銀行と公共施設、それに準公共団体の立派な建物ばかり。一方でガラス美術館はハコモノにお金を使い過ぎたせいなのか、所蔵品・展示品が少な過ぎ。民間の楽翠亭美術館の所蔵品は突出していましたが、汚職と縦割りの役所仕事で進まない都市計画と元気な民間篤志家の違いという対比という点でみれば、そこに富山の実情が反映されているような感じ。

下の写真は来月8月末全館オープン予定の県美術館屋上です。この遊び場はなかなかのものでしたが、内部のエスカレーターは上りのみ。なぜ下りを作らなかったのか、エレベーターで十分だと判断したのか。足の悪そうな年配者が階段をおそるおそる降りるのを見ていて、そんな疑問がふつふつ。美術館ができるまでのV映像がまるで言い訳の羅列ではないかと思えてくる位。

富山のコンパクトシティーは今後どうなっていくのでしょうか。ゴーストタウン化しつつある地元大津駅前に比べるとずっとマシとはいえ、繁華街の裏に入るとシャッター通りになっているのが気になりました。

だいいち役所の関与が大きすぎると民間活力は殺がれて都市はだんだん没落するのが通り相場。公共投資で成長するというシナリオは既に昔のものではないのか・・・、富山駅前を見ていてそんなことを考えました。