風呂水利用

.EcoStyle

拙宅では雨水だけでなく風呂水もいっしょに溜めて水洗便所用水に使用することを考えています。

   雨水だけでなく風呂水を使おうと考えたのは、降水の季節変動による貯流量の変化を平準化するためと、風呂排水量が意外に大きく排水するのがもったいないことを考慮したためです。これは別に難しいことでも何でもありません。雨樋だけでなく風呂桶排水も約1トンの地下貯留層に接続すればいいだけ*。ついでいえば、風呂の残り湯は洗濯用水にも使うので、残り湯のうちさらに残った分だけが水洗用水に回されるということになります。水洗トイレの水使用量は家族の人数、使用回数、トイレの水洗方法によっても異なりますが、一人5回と考えても75リットル(15リットル)になります。これは無視できません。貯留槽に小型井戸ポンプ、それに少々の配管だけでこの分の水の有効利用を図ることができ、水資源や環境の保全に繋がることになるのですから、少なくとも「環境共生」等と言っている住宅や設計者ならば避けて通れない問題だと言ってもいいでしょう。
  
 面白いことに今年の2月から積水ハウス・積水化学の住宅オプションとして、風呂水利用システムが追加されています。「浴排水再利用」という個人住宅節水システムがそれ。簡単に言えば、浴槽排水を容量300リットルの小型タンクに蓄え、ポンプで便所へ送り水洗用水として活用しようというもので、先の拙宅との設備的な違いは雨水利用を考えていないという点と、殺菌槽を設けて塩素消毒しているという点くらい。お値段も約30万円からとのことで気軽に導入できそうです。
しかし、この話を聞いて私はちょっと考え込んでしまいました。お風呂に入る、排水する、すると自動で水洗便所に活用されるという仕組みは私の設計も積水ハウスらの設計も同じ。水資源の活用という面でも同じなのですが、どうしてもひっかかるんです。あれこれ考えていて決定的に違う点があるのに気づきました。そのシステムに対する居住者の心構えに違いが出る可能性について、です。
 「環境にやさしいシステム」でも、その目的、意味や価値を居住者が理解しないと「単なる便利な設備」のひとつに過ぎず、ファンション的な商品に成り下がるのではないでしょうか。あるいは、環境保護という曖昧な概念に基づく「お仕着せのシステム」になりかねません。だって、風呂の残り湯は洗濯に使うのが最も手ッ取り早い活用方法なんですが、このシステムでは(やろうと思えばできるけど)そんな話にはななりません。

 また、塩素消毒の追加は衛生的な問題を考慮してのことでしょうが、300リットルの水であれば使いきるのは早いのでわざわざ殺菌する必要は過剰サービス。居住者がシステムの内容を知っていれば、必要のない仕組みだと私は思います。また、300リットルと.小規模タンクにしたために浴槽排水が少なくなり、新規に水道水を補充しなければならないことも日常十分あり得ますが、居住者はそこまで考えることなく水洗トイレの水をじゃあじゃあ使うということに歯止めが効きません。積水ハウスや積水化学にお願いしたいのは、このシステムの意義、必要性の徹底と日頃このシステムになじむための仕組みを考えていただきたい。フリーメンテナンスなどと言わずに、ほんのわずかでも居住者の参画を意図した「少し不便な設計」も意識的に埋め込んで欲しいものだと私は考えます。いったん設備してしまえば、後は水利用や水資源保護への思いが繋がらないようでは「単なる便利なシステム」に成り下がるというのはそういう意味です。わかるかなぁ。わからんかもしれませんね。でも、「違いがわかる」住宅メーカーになって欲しいな(苦笑)。
 換気システムでもそうだけど、居住者がスイッチを入れないと何の役にも立ちません。居住者も住まい方次第で便利なシステムを活かすか殺すかが変わりますから、設備を入れただけで満足してはいけません(面倒ですね)。ちなみに、浴槽排水利用は新築だけでなく既存の家庭でも可能です。皆さん、頭を絞ってみて下さい。

*ゴミや髪の毛ほかの夾雑物除去やポンプ揚程の計算、配管の取り回しなど細かいテクニカルな問題はありますが、そんなに難しい設計ではありません。

*INAXには「アクアエコ」という家庭用節水システムがあります。こちらは、浴室、洗濯機、洗面所排水を浄化槽で処理してトイレや散水に使おうというもので、浄化処理が必要となります。既に浄化槽がある家庭ではいいかもしれんせんが、こうなってくると処理に要するエネルギーの問題を考えないとはたしてエコロジカルかどうかはわかりません。