ベスイスラエル病院

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ある本を読んでいると懐かしい病院名が登場。ベスイスラエル病院です。ここは、NYのマンハッタンとブルックリンにあるユダヤ系移民のために作られたものですが、アルバート・アインシュタイン医学校の大学病院でもあり、マウントサイナイ・ヘルスシステムという病院ネットワークの一員です(注)。
その病院、2020年頃に閉鎖するというニュースが流れたのはちょうど一年前のこと。米国の病院事情がオバマケアで複雑化してきた、その実例のようです。

(注)マウントサイナイとは日本でいうところのシナイ山。モーゼの十戒でも登場。

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私、この病院を訪れたことはありませんが、20年前にこの病院の、正確にはこの病院経由で、米国国立医学図書館の医療情報データベースを使っていました。当時、クリプトスポリジウムやジアーディア等の水系感染症の症例や治療例を検索するのに必要だったからです。

当時既にUSの国立医学図書館が膨大な医療文献をデジタル化しオンラインで検索できるようになっていました。でも個人で日本からアクセスするのはほとんど困難。ところが、ひょんなことでベスイスラエル病院経由ならアクセスできる、そのゲートウエイサービスを年間契約で受け付けていることを知り、問い合わせてみるとオッケイ、ウエルカムという返事をもらったことを昨日のように覚えています。

使ったのは、MEDLINE(MEDical Literature Analysis and Retrieval System Online) 。まず、検索で記事の所在を確認し、要約をチェック。必要なら本文コピーを郵送してくれるという病院のサービスは得難いものでした。日本国内の図書館で文献を調べるのより遙かに楽で、ネットが当たり前になる時代の前哨だったということでしょう。

このDBはその後PubMedという名称で一般公開されるようになりましたが、当時のネット環境は今とは大違い。回線は細いし速度も遅く、フリー版では使い物になりません。そういったことで、ベスイスラエル病院経由のMEDLINEはなかなか重宝しました。

そのベスイスラエル病院ですが、昨年突然病院閉鎖のニュースが流れました。一世紀を超える歴史をもつ病院が2015年度に一億ドル強の営業損失。今後10年で計算すると20億ドルにもなると推測されるため、病院閉鎖を決断したのだそうです。たまたまMEDLINEのことを再チェックしていてこの閉鎖を知り、びっくりした次第です。

米国ではオバマケアのおかげで低所得な人でも医療サービスが受けられるはずなのに・・・と思ったのは私だけではないはず。でも、いろんな記事を読み進めると、米国で起きているトンデモナイ話に唖然としてしまいました。

山口典宏医師(USロックフェラー大学講師)によると、オバマケアは約5000万人の無保険者を取り込みましたが、一方で診療コストの削減が図られたため、低所得層の診療を主にする病院には致命的になってしまったとのこと。要するに、儲からない患者は違う病院へ送ってしまえというネオリベ的発想の病院が増えたため、貧困層に門戸を開けていたベスイスラエル病院は経営難に陥ってしまったということらしい。あらら。

ベスイスラエル病院は今後病床を持たない緊急外来のみに特化するとのこと。というのも、緊急診療はコスト削減の例外だから。お金がないと病気にもなれないどころか、患者の奪い合いで病院ですら成り立たない診療制度改悪は、山口さんの指摘通り早晩日本にもやってくることでしょう。いや〜な話だ。