特記仕様書について

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 特記仕様書とは、一般仕様書や共通仕様書では仕様が定まっていないものについて特別に別記するために作成するものです。たとえば、サッシ素材は何を使うとか、硝子の厚さや色をどうするとか、そういった類いから、工事に関する細かい規定について記す場合が多いのではないでしょうか。有田宅の場合は公庫の共通仕様書を使わなかったため、仕様書を別建てすることも考えましたが、設計時の打ち合わせ備忘録という位置づけで特記仕様書を工事業者と契約時に交しました。本来ならば、一般仕様書の補完として使うべきところですが、注文事項を特記で契約しておくというのもひとつの手なので、恥を覚悟で紹介します。有害建材を排除し、納品内容を厳密に施主との打ち合わせの上に決めるという手続きを重視した個人的な1ケースだとご理解下さい。なお、赤字部分は注釈です。

特記仕様書本文

 本建築工事は、有害な化学物質を含む建材を可能な限り使用せず、自然素材を活かした家づくりをめざすものである。とくに、有害なホルムアルデヒドを含む接着剤や合板を排除し、断熱材にも炭化コルクを採用し、自然の通風換気に配慮したものとする。このことは居住者(施主)のみならず、施工者の健康や安全性にも留意することになり、有意義なことであると考える。また、水洗便所用水は屋根雨水等を利用したり、太陽エネルギーを利用した発電などを採用し、さらに建築廃材の安全性も考慮した環境共生型の建築を図るものである。各工事についての特記事項は以下の通りである。

1.基礎工事
1)基礎は下部に防湿シートを設置したベタ基礎とする。浴室下はコンクリート打ち、書庫下はコンクリート打ちとし、通風経路を確保する(計算書は提出済み)。
2)土台には防蟻防腐薬剤を使用しない木材(桧かヒバ等)を使用し、1F床下高さは最低450mmを確保する。土台下には基礎パッキンを入れたり換気口を設けて通風を確保する。

*書庫は重量が嵩むので(1トン/平米)、コンクリートの地中梁のようにして強度を確保した。また、基礎パッキンを使えば、換気孔面積は十分確保できるのだが、実際例を参考にしステンレス網の通気孔も設置することにした。ところで、「1F床下高さは最低450mmを確保」って建築基準法規定そのものですね(苦笑)。

2.木工事
1)柱などの構造材には薬剤使用木材、集成材、合板は使わない。床は無垢材のフローリング、壁材、天井材についても無垢材を原則とする。
2)窓枠、ドア枠、幅木等の造作材についても、可能な限り合板使用を避ける。下地ボード・構造用合板を使う場合、原則としてホルムアルデヒド系接着剤を含まないものを選択する。木工用の接着剤については、原則として使用しない。もし、JASのF1規格合板や接着剤を使用する場合には事前に協議して決定する。
3)重量物を載せる床部分については、根太などの補強を行い対処する。該当個所については事前に協議する。
4)断熱材は炭化コルクを使用し、設計厚さは床・壁30mm、屋根50mm程度。
5)玄関、風呂場の出入り口を除き、バリヤフリー設計とする。
6)この他、当初設計と異なる材種や使用個所の変更については事前に協議し決定する。

*工事費の約半分が木工事、木製建具、造付棚で占められるという比率になった。合板を使わず無垢材で建てるとすれば、ごく当り前の結果かもしれない。断熱材はいろいろと検討した結果、コストは最も高いが、炭化コルクの断熱性と防水性、防虫性、廃棄物安全性、施工時の作業者への安全性等を考慮し、これしかないと判断。

3.屋根工事
1)ステンレス瓦棒葺き屋根とし、ステンレスはSUS304かそれ以上の耐腐食性を有するものを使用する。
2)たる木間に断熱材(炭化コルク50mm程度)をはめ込む。太陽光発電用のパネルを載せるので、架台の設置にはとくに防水に注意する。
3)屋根の雨水排水については水洗トイレ用水への活用を図るため、雨樋等の設置については事前に十分協議の上、施工する。

*屋根上に太陽光発電用のパネルを載せるため、瓦は止めた。何とかベストもアスベスト排除の危険性を考慮して検討対象外。木造小屋裏造作のため、屋根裏断熱ではなく、屋根断熱とした。雨樋については別途設計協議を行って経路や配置を定めている。

4.板金、樋工事
1)屋根等の板金工事は銅製の素材で加工したものを使用し、樋については設計書の通りの素材で施工する。
2)屋根排水の樋には地下水槽に貯留するもの、及び直接地上タンクに接続するものがあり、据付け施工には注意する。

*樋素材は銅でやろうと考えたが、あまりにも「金持ち仕様」でコストがかかりすぎるので、泣く泣く諦め、雨樋は鉄板入り塩ビとなった(残念)。塩ビを使った2ヶ所のうちのひとつ。屋根排水の取り扱いは別途設計協議で地下タンクへの接続やポンプの選定、水洗トイレへの経路などを定めている。

5.左官工事
1)外壁は竹小舞の土壁で施工し、外側を焼杉板で押え室内側は珪藻土等の漆喰で仕上げる。
2)漆喰素材については有害物質を含まないものを選択し、事前に協議決定する。
3)浴室床や壁、台所壁、玄関土間等については設計時に指定の建材を用いるものとし、設計を変更する場合は協議が必要。

*外壁材は悩み抜いた末、焼杉板とした。焼杉も薬品処理したり化粧したり塗装したりといろいろあるが、本当に焼いたものを採用する。珪藻土漆喰の選定については契約時には製品を決めていない。タイル関係はすべて有田サイドで検討してメーカー、品番、接着剤まで決めた。

6.アルミサッシ建具工事/鋼製建具工事
1)窓サッシはアルミ製とし、一部の窓には指定の金属製ブラインドを設置する。
2)屋根材の変更に伴う寸法変更については、事前に協議して決めるものとする。

*窓サッシは当初木製サッシを考えていたが、木工コスト等が嵩んだせいもあり、アルミ製に切り替えた。サッシのような大型のものは将来もう少し再利用が進むことを期待したい。また、一般的な雨戸は使わず、電動のブラインドシャッター(サンシャディ)を使い、防犯と通風換気効果を同時に期待した。というのも、有田宅ではエアコンクーラーを使わず、自然風を前提にした生活習慣が定着しているから。

7.木製建具工事
1)玄関ドア、居室内引き戸及びドア、欄間戸については、すべて無垢材による建具工事とする。玄関ドアについては2重施錠を施す等、具体的な設計については事前に協議し決定する。
2)障子や襖の紙部分については塩ビ素材を排除した和紙を使用する。

*合板を使えばコストを下げることは可能かもしれません。しかし、ホルムアルデヒド含有量をいちいちチェックしてより安全なものを選択する苦労を考え、一切の合板を排除することにしました。ドアや内部引き戸、建具関係はすべて無垢材です。コスト的にはこの関係だけで2割アップ程度で、絶対値としては気にする必要もありませんでした。

8.塗装工事
1)原則として建屋内部の塗装は本工事では行わない。外部木の塗装内容、使用塗料については、事前に協議の上決定する。

*木材の呼吸、調湿性を重視して内部の塗装は原則止めることにしました。例外は水回り、その辺の塗装は自分でミツバチワックスや柿渋で塗ることにしています。ワックスはドイツ製のものを比較検討、試し塗りした結果、私の家では今のところリボスフものを考えています。

9.内装工事
1)本工事では木材や漆喰で天井や壁を構成するため、内装クロスはほとんど使用しないが、一部個所についてのみ非塩ビ製品で有害物質を可能な限り排除した和紙等を用いる。なお、キッチン等防火の必要個所のみ対応クロスを使用する。

*キッチンは消防法で規制されるため、どうしても不燃性難燃性の石膏ボードを使わざるを得ず、その部分だけはクロス張りにしますが、非塩ビでやろうと考えています。漆喰は珪藻土を予定、設計時には製品までは決められませんでした。

10.電気設備工事
1)電気契約に伴う必要容量については設計時に資料を提出した通り。関西電力からの電線引き込みについては集合ポールで受け入れるが、太陽光発電の関係で売買電契約となり、メーターは2つ必要となる等、太陽光発電からの入力を配慮する。配電/分電盤は漏電ブレーカーつきのものとする。
2)建屋内には100Vと200Vが混在するため、200V対応を前提に単相3線で引き回し、個所に応じて電圧を調整する。コンセント、スイッチや配線工事の内容については、施主側の提出した資料に従い、事前に協議を行い決定する。
3)照明器具は原則として施主提供とするが、浴場等の一部個所については電気工事の施行時に設置をお願いする。
4)電話工事については、ISDN(INS64)を1回線引き込み(既契約回線の移設)、屋内に22mmのCD管を2系列、必要経路に敷設。CD管の1系列は電話ケーブルとネットワーク用ケーブル(カテゴリー5)を引き回し、1本は将来用としてダミー線を引いておく。電話コンセント個所については、事前に協議して決定する。なお、回線設備のDSU、TA、電話機は施主持ち込みとする。

11.換気設備工事
1)建屋内の通風換気を確保するために、1F便所、書庫、玄関、2F便所、2F納戸、2Fクローゼット、及び屋根裏2ヶ所に排気用の換気扇を設ける。給気については、協議打ちあわせの上決定する。
2)台所の換気設備については施主購入とし、設置を施工者にお願いする。

*部屋の間には開閉式の欄間戸を設計しましたが、外気とのやりとり試行錯誤で決めました。最終的には差圧式の吸気孔を追加する予定です。キッチン換気は未だ検討中。

12.給排水・ガス設備工事
1)水道給水に使用する配管材は架橋ポリエチレンとし、さや管ヘッダー工法を用いる。使用した配管製作会社の溶出試験データ等については、事前に文書で提出をお願いする。
2)配管経路、管種等については、事前に協議確認の上施工することとし、ウォーターハンマー対策を施すこと。給水系統は水道水と雨水再利用の2つがあるため、配管の接続については十分な注意する。
3)排水については、必要個所に臭気対策を行い、屋根排水の再利用と直接下水道へ排水するものを区別した経路を施工する。雨水の屋根排水の一部は地上に設置した小型タンクに蓄え、一部は風呂桶排水といっしょに地下水槽に貯留し、水洗便所用水として活用する。給水個所や給水栓の種類等について設計時に打ちあわせたもの以外を用いる場合は事前に協議する。
4)ガス工事については配管経路やガス栓の設置場所について事前に協議する。

*水道給水管は非塩ビとし、工法も漏水防止やメンテナンスを考慮した。ガス給湯器については、ソーラー温水器対応である。現在、リンナイとノーリツだけが対応機器を販売しているが、拙宅ではノーリツを選択。

13.住宅設備機器工事
1)洗面器や給湯器については設計時に指定のものを使用する。とくに、給湯器については太陽熱温水器からの入水を予定しているため、関連の配管設備については事前に協議する。
2)浴槽は指定の槙材の風呂桶を採用し、排水を雨水貯留槽に接続する。また、浴室には指定の浴室乾燥機を設ける。その他、指定の機器以外のものを使わざるを得ない場合には事前に協議する。

14.衛生器具設備工事
1)トイレ器具、水栓等衛生器具については、設計時に指定したものを採用する。

*洗面器選びも結構手間取った。使いやすさを重視し、障害者用のものを選んだり、乾電池駆動の自動水洗を選択。浴槽は思い切って木製としたが、費用はそれほど変わらなかった。水洗選びもなかなか大変で楽しかった。
 
15.家具備品(棚)工事
1)棚等の家具工事は、原則として無垢材を用いて施工する。必要個所、設計内容を当初設計と変更する場合には事前に協議する。また、接着剤は原則として使用しないものとし、もし必要な場合には事前に協議して決定する。

*造付の棚等もすべて合板を排除した。コスト的には材料費アップで2割程度。手間賃が大きいだけだった。家具工事は大工仕事とし、これもコストを大幅に下げることができた。

16.特殊工事
1)書庫はコクヨの可動書架を設置するため、構造強度に合致した床の施工が必要で、レールの取り付け、設置については事前に十分な打ち合わせの上、行う。
2)屋根の上には指定の太陽光発電パネルを設置するが、設置方法については事前に協議を行い決定する。
3)雨水排水設備工事として、地下水槽、地下水槽流入槽(グリーストラップ)、地上貯水槽(天水尊)、地下水槽用手押しポンプ、雨水循環ポンプの設置と関連配管、衛生設備機器への接続があり、これらの施工に際しては事前に十分打ちあわせの上、施工する。

*本が多く整理に困るので、書庫を設けて収納することにしています。この場合、かなりの重量になるため、床の構造計算を別途行い、基礎部分から強化すること。10年ぶりの構造計算でした(苦笑)。ソーラー関係は建築工事の契約とは別建てにしたので、取り合い部分だけが問題になる。雨水工事は水道業者が熱意をもって対応してくれそうだったので、工事に組み込み設計段階から詰めておいた。

17.その他
1)駐車スペースの確保、隣地境界関連の工事等の外構工事については、事前に協議を行う。
2)キッチン設備は給排水ガス電気工事を除き、施主側の設備搬入とするが、設備の据付については施工者側にお願いする。
3)太陽熱温水器設備を将来導入するため、配管経路のスリーブ管を設置施工する。
4)建築中の室内でのタバコは厳禁とし、木材や建材にタバコのニオイがつかないようにお願いする。
5)工事工程については逐次連絡を行い、当初予定の工程表に大幅な変更がある場合には事前に協議する。
6)もし現場工事で当初設計から変更がなされた場合には設計図書を修正し、工事完了時には完成図書として提出する。
7)その他、契約時の設計内容や上記特記仕様に疑義が生じた場合には、施主と施工者との協議の上で決定することとする。

*キッチン設備は有田側で別設計し、大阪/道具屋筋の厨房設計屋さんに依頼。また、私も連れ合いも大のタバコ嫌いでニオイには耐えられません。したがって、木材にちょっとでもタバコ臭がつかないようにお願いすることにしました。工務店側はこれを受け入れ、タバコを吸わない職人さんを優先して仕事に配置することになりそうです。