物欲と必要性

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ときどき無性にモノが欲しくなることはありませんか。必要なものならまだしも、取り立てて火急のものでもないのに欲しい気持ちだけが募る・・・なんて気持ちになったら危険です(笑)。まぁそうはいっても物欲は尽きません。でも、その妥当性を考える時のコツというか知恵みたいなことについて少し。

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1億円貯まったので、会社を辞めました。昨年末、坂口一真さんの『1億円貯まったので、会社を辞めました。』 (自由国民社)を読みました。最初に書かれているように「1億円貯まった」のではなく、自分の預貯金と退職金とを足し合わせると1億円を超えたので早期退職できたとのこと。

内容はどうでしょうか。全編お金をコツコツ貯める蘊蓄を並べているのですが、なるほどなぁと思わせるものがある一方でご自身の嗜好もあって、個人的な経験談のオンパレード。最後にどうまとめるのかと気になりましたが、「趣味にじゃぶじゃぶ使った」からお金が貯まった、という下りには苦笑してしまいました。好きなことをしてお金を貯めようと云っているんでしょうが(これ自体は◎)、普通の人ならお金は貯まりません。だって趣味の世界って物欲に支配されてしまうから。

私思うに、お金を貯められるかどうかというのは自身のルールと規律の問題。おまけに、「ルール」を考えても「規律」が伴わないとうまくいきません。これは株でもいっしょ。小手先のテクニックは些細なことでしかないんです(きっぱり)。

本題に戻ります。お金を貯めようと思ったら物欲のコントールはいうまでもありません。そういう点で、この本の中に興味深いことが書かれていました。それは「欲しい物と使える物は違うことに気づいた」ということ。これは達観です。

著者曰く、欲しいと思ったらこどものおねだりを思い出せとのこと。要するに、宣伝文句に乗せられたりして、やみくもに欲しがるだけではお金は貯まらないということでしょう。

車で考えてみましょう。普通の舗装道路であれば軽自動車や普通自動車で十分です。つまり普通車でオッケイというのが必要性で、ベンツがいい、ポルシェがいい等と云いだしたら、それは「欲しい物」。

腕時計でも同じ。時を知らせるだけなら簡単なモノで十分ですから、パテックフィリップスやロレックスは「欲しい物」でしかありません。バッグだってそう。シャネルやグッチがどちらかは云うまでもありません。天唾でいえば、カメラのライカもほとんどの人にとっては「欲しい物」の範疇でしょう(自爆)。

ただ注意しておかなければならぬことが1つ。「欲しい物」と「使える物」の2次元マトリックスの背後には「お金」が潜んでいます。つまり、買えるかどうかということが判断基準になるわけ。

資産や所得がある人にとってはベンツやロールスロイスは普通の人の軽や普通車的な感覚かもしれませんし、むしろ品質やサービスあるいはステータスを重視するなら、高額物品には割安感があるのかもしれません(私はそれらを欲しくないので本当のところは不知)。だから、「欲しい物」と「使える物」との境界は曖昧で人それぞれ。

ちなみに、私は「欲しい物」を否定するわけではありません。むしろ「欲しい物」があるからこそ、お金を貯めようというモチベーションになるのではないでしょうか。また、「欲しい物」は個人個人で異なりますから、その嗜好を他人様にあれこれ云われようが関係なしといえばその通り。

ただ、その嗜好を無制限に展開させてしまうと、貯金どころか破産に繋がります。だから、買う判断をどうするのか、対象の物が「欲しい物」なのか、それとも「使える物」あるいは「使う物」なのか、それを冷静に見極めていくのが大切、ということを先の本で改めて考えた次第。

蟹しんじょう@あらや滔々庵