水と油

Water

 水と油は混じりません。こんな簡単なことを忘れてしまうと、台所の油排水を魚の住めるBOD(生物化学的酸素要求量)5ppmにするのにバケツ何杯の水が必要かという愚かな算術をしても何の疑問を抱かないようです。昨日14日のNHK番組『ためしてガッテン』もそのひとつでした。

油を流せば、管内面にへばりついて排水の流れを遮る原因となることになぜ気がつかないのでしょうか?そうなってしまうと、排水の流れが悪くなって汚水が溢れたり、除去するためにポンプを使用したり、エネルギーだけでなく人的手間もかかることになります。これでは困りもの。「油を水で薄めて魚の住める水にする」という発想というか、事例がもともとコケているわけです。ついでいえば、下水処理場の処理でも油分は厄介な部類のひとつで、本来の有機物質分解のマイナス要因になるため、排水すべきものではありません。「排水に油を流さないで」とストレートに言うべきところです。
 もともと、この手の話は「皆が汚染源」という話をまことしやかにするために作りだされた話で、おかしな点はいくらでも指摘できます。たとえば、「コメのとぎ汁が問題」という議論もおかしい。コメのとぎ汁のBOD値を元にすれば、水何杯で5ppmに薄まるという話はその通り。しかし、とぎ汁は下水処理場の生物分解で十分に処理できます。一方、BODには計測できない生物難分解性物質はどうでしょうか。見かけはBOD値が低いので(生物が分解できないから当たり前)、BOD5ppmにするのに必要な水の量は少なくて済みます。希釈する水量で汚染度を比較するのなら、後者の方がベターになってしまいますが、こちらは下水処理場で分解されず下流へ放流されてしまいます。場合によっては、水道の水源になったり、水産資源に影響を与えたりするかもしれません。さて、コメのとぎ汁と後者の物質とでは、どっちが私たちにとって厄介でしょうか。答はもう必要ありませんね。汚染をBOD指標だけで評価しようというのが土台無理な話なのです。
 要するに、この手の汚染話は比較できるレベルの話を目的を明確にして議論しないと、わけのわからない結果を導きだすというわけ。この辺をはしょって国が何かの目的で行う「大本営発表」を、そのままマスコミで垂れ流すのは止めてほしいものです(哀)。