オーディオとネット

.opinion

オーディオ話、続きます。ローカルネット内で音楽を送るのに無線で大丈夫なのか、それとも有線でないとダメなのか。この問いに答えるにはネットの伝送速度の知識が必要です。面倒な話になりますが、ネットオーディオには必要な知識ですので私自身の備忘を兼ねて紹介しましょう。

・・・

aleafs1611b私が最初買ったレコードはメリー・ホプキンの「悲しき天使」。また最初のLPレコードは真っ赤な箱入りのボブ・ディランのベスト盤2枚組。後者を福岡は天神のYAMAHAで買った時のことを今でもよく憶えています。

でもそんな時代は遙か昔のこと。1982年にCDが登場してレコードが消え去り、そのCDも今ではネット配信の普及によって葬り去られようとしています(注1)。

さてネットオーディオの時代になるとネット回線の伝送速度が問題になります。とくにローカルな環境でオーディオを楽しむためには通信回線を高速かつ高品質にしなければなりません。


私の例でいきましょう。拙宅の音源(ミュージックソース)には携帯用としてiPhone4、iPhone6があります。この2つにiTunesサーバーからダウンロードしたものを音源としてキープしているのですが、実際にiPod化して活用しているのは電話として使わなくなったiphone4の方です。ところが、こいつは6年前の機種であり今となっては通信規格がショボい。

iPhone4を有線でアンプに繋ぐ場合、iPhoneのイヤホン出力からアナログで出すことになります(前回説明した通り)。無線で繋ぐならBluetooth経由か、あるいはWi-Fi経由になります。iPhone4のWi-Fi規格はIEEE 802.11b/g/n (802.11nは2.4GHzのみ)ですから、802.11nの5GHzは使えません。

Bluetoothはどうか。良質な音楽再生という観点からすると問題あり。まず、CDの音質は伝送できません。CDとは原音を16bit/44.1MHzでサンプリングしたものですから、これを滞りなく伝えるには1.4Mbpsの伝送能力が要ります【16 x 2(右と左)x 44.1 】一方、青歯さんは標準圧縮のSBC方式で高々300kpsですから、能力的にCD音質は伝えられません。おまけに2.4GHz帯の電機機器(冷蔵庫や電子レンジなど)からのノイズを拾ってしまい、音が壊れたり途切れたりが発生するから困りものです。

イーサーやWi-Fiはどうか。100BASE-TX(有線のイーサ)で約10Mbps、802.11nで20Mbps 等々となっています(下図参照)。有線よりも無線の11nの方が速いのに驚きますが、実際には他の負荷との関係があるので有線の方が安定した速度が確保できるでしょう。いずれにしても、CD音質の1.4Mbpsは楽々クリアしています。

中村和宏 『本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践』より

中村和宏 『本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践』より

同じ無線でも一昔前の11g以下では上図からもわかるようにCD音質を伝えるには能力的に無理。AppleMusicやSpotifyが高々256bpsや330bps程度に留めているのは、そうしたユーザー側の実情を考慮した結果でしょう。

ということで、最初の問いについては100BESE-Tの有線はオッケイ、無線なら802.11nを確保しておけばいい、というところでしょうか(干渉や妨害要因は別)。

私のケースでは、iPhone4のiOSは最終版が7.1.2なのでAppleMusicには対応していません。仕方がないのでMac上のiTunesでプレイリストを作り、そのサウンドデータをiPhone4に同期させ再生させることにしました。つまり、インターネットからのサウンドデータが使えないので手元のiPhone4に蓄えたものを使うわけ。もう1つ、iOSが古いのとWi-Fiが2.4GHz帯にしか対応していないのでApple純正のオーディオプレーヤー以外では門前払いになってしまいます(哀)。また、NASのミュージックサーバーを動かすアプリはiOS7では動かないのでNASのサウンドデータも使えません(又哀)。

ただ、そのiPhone4でもAirplayはiPhone4(iOS 7.1.2)でも使えます。だからAirMacExpress経由のWi-FiでBOSEが使えるのです。ネットではiPhone4はAirplay不可能との記述をよく見ますが、私んとこではオッケイですからiPhone4 & AirPlayはぎりぎりセーフみたい。

これからのネットオーディオはCD音質の伝送つまり1.4Mbpsが標準になり、そのロスレス方式であるALACやFLACが当たり前となっていくことでしょう。AppleがiPhone7でイヤホンのアナログ端子をやめ、Lightning端子からのデジタルデータ出しにしたのはデジタルなら音質劣化がないからであって、将来のオーディオ環境を見越した仕様変更だろうと考えます(既にそういう指摘はネットでちらほら)。

それにしても、オーディオマニアの皆さんが通信伝送の細かい議論をしているのをネットで見ると、世の中変わったなぁとレコード時代からの生存者は思う次第。

aleafs1611

(注1)なぜかしら日本では未だにCD商売が続いているのは、私を含め音楽旧石器時代な人たちがまだ大勢いることを示しているのかもしれません(苦笑)。