オーディオはすっかり様変わり

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先月中頃、拙宅のCDラジオの調子が悪くなりました。せっかく買ったCDがまともに聴けないのでは困ります。じゃ新しいのをと思って調べてみると、あらら、ここ10数年でオーディオ環境は様変わり。一言でいえば、音源がデジタル化したことで再生装置の考え方が大きく変化。あれこれ勉強した結果はっきりしたのは私自身が時代に取り残されていた、ということでした(笑)。

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iPodが出たのは2001年の11月ですからもう15年。当時の酷評にもかかわらず大ヒット商品になり、オーディオを取り巻く世界を大きく変えてしまいました。一般人にとってはウォークマンがiPodに変わったくらいの受け止め方だったですが、先見性のある(メシのタネに関わるというべきか)オーディオメーカーはそうじゃありませんでした。

iPodの登場を受け、レコードからCDへとサウンドソース(音源)が変わるだけでなく、いずれCDすら必要としない時代がやって来ると読んだのか、たとえば英国のLINNはアナログプレーヤーやCDプレーヤーで著名なメーカーでしたが、2007年には早々とネットワークオーディオプレーヤーを発表。AppleMusicやSpotify、あるいはPandoraみたいなサービスが出てきて音楽がネット経由になるのは今でこそ当たり前のように思えるかもしれませんが、当時はまだ従来のプリメインアンプやスピーカーというレガシー機器が跋扈していましたら、LINNの英断は関係者を驚かせたそうな。ちなみに、LINNはこの2年後にはCDプレーヤーの開発生産から完全撤退してしまいます。

昔は居間に大きなスピーカーを置き、アンプやケーブルに凝るというのがオーディオ道だったのが、現在はパソコンやiPhone、iPod、あるいは専用のDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を使って軽快に音楽を楽しむという人が多いのではないでしょうか。そうなると専用のCDプレーヤーや立派なアンプは必要なし。イヤホンで聴くならスピーカーも要りません。そういう変化は経済的な理由も大きいのでしょうが、音楽そのものに対する考え方も変化してきているのではないでしょうか。

本当に好きな音を手に入れるためのオーディオの科学と実践 失敗しない再生機器の選び方 (サイエンス・アイ新書)私はどうかといえば、サウンドをBGMで流せばいい、大がかりなモノは要らないと考えて長年BOSEのCDラジオ等を採用。でも、モーター仕掛けのCDプレーヤーはヘタります。この16年で二台のBOSEとJVCのものを使い倒し今回に至ったのですが、ハイレゾや新しいオーディオ機器がどうのこうのと云う前に何が聴きたいか、どう聴きたいか、どこで聴きたいのか、そんな基本に帰ることこそが大切だと、ある本が私に教えてくれました。

右の本の著者である中村さん曰く、今の時代本当に好きな音を聴こうというなら、PCをサウンドソースに、AirMacExpressをデジタルとアナログの橋渡しに使って昔ながらのアンプやスピーカー(レガシーなオーディオ装置)を利用しよう、とのこと。スピーカーの重要性についても強調されていました。そうか、それは気付かなかったなぁと腑に落ちた次第です。

いったい何のことを云っているのか。この本を読んで私がやったのは、古いBOSE(10年前の第2世代Sound wave radio)にAirMacExpressをつけてネットオーディオ化すること。自宅ではBOSEのCDラジオで十分なので、コレを活かそうというわけです。BOSEの新製品でも同じことができるのですが、スピーカーが使えるなら約1万円程度のAirMacExpress採用で生き返るのです。

要するにローカルネットに対し、APとしてAirMacExpressを設け、それをブリッジにして従来のオーディオ装置のAUXにサウンドを流し込むのです。この場合、AirMacExpressはルーターとして外部には繋がずアクセスポイント的な利用に限定しています。

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模式図を描けば上の通り。BOSEのCDラジオはアンプ付きのスピーカーみたいなものなのですから、そのままAirMacExpressに繋げます。この方式でいけば、音源(サウンドソース)はパソコンでもiPhoneでも、あるいはNAS(Network attcached Storage)でもオッケイですし(注)、何ならApple MusicやSpotify等のようなネット配信のものでも古いBOSEで同じように使えます。これは素晴らしい。

この威力、中村本を読んだ時すぐには理解できませんでしたが、やってみると、こりゃ凄いなぁの一言。オーディオファンの間ではよく知られた話だというのもつい最近知りました。ちなみに上のBOSEの代わりにネット非対応なAVテレビを繋げても同じことができます。新規のオーディオ製品を売りたいメーカーにとってはあまり触れてほしくない話ですね(苦笑)。

そんなオーディオ装置に対する状況変化を受けてか、マーケットも大きく変化してきました。レガシーなアンプやスピーカーは端に追いやられ、お店で売れているのはスマホに繋ぐイヤホンやパソコン接続のスピーカーくらい。

音源もネット配信がメインになりつつある中、CDショップは軒並み低迷。というか、日本はまだマシで日本以外ではCDは商売にならんという話みたい。中古市場もだんだん先細りでツタヤのレンタルCDやブックオフのCDはいつまで続くのかという有様です。ディランじゃないけど「時代は変わる」、オーディオを取り巻く状況は私の知っている20、30年前とはすっかり様変わり、そんなことを感じる昨今です。。以上、ここ2週間の成果を披露する次第です。

有田宅のBOSEとAIrMacExpressです。

有田宅のBOSEとAIrMacExpressです。

(注)パソコンのiTunes等で音楽CDを読み込む時にノンレス方式にしておけばCDとほぼ同じ音質のデータが作れます。わざわざ高価な音楽CDプレーヤーを使う必要はどこにもありません。
(追記)デジタルなオーディオ環境を作るにはローカルLANやWiFiの規格および伝送速度、はたまたMP3、AACやALAC等の圧縮方式とCD音質との違いとか知るべきことはたくさんありますが、繋がって音が出ればいいのだ、という大らかな気持ちでいいのではないでしょうか。