正直が一番;シドニー事件

Water

 今夏のシドニー事件を追跡していて思うのは、やっぱり正直が一番、ということでしょうか。

当初7月下旬、とある地域の送水管でクリプトスポリジウムやジアーディアが見つかった時、シドニー水道は近くの土木工事にる汚染だと発表しました。これは全くの言い逃れ。調査もせず住民をなだめるだけの方便だったことがすぐに暴露されます。工事をやっていない地域でも問題のムシが見つかったからです。
その後、浄水場でもクリプトやジアーディアが見つかり、シドニー全域が感染地域になりうる危険性が判明します。しかし、この時点でも未だ水源まで含めて感染源を調べていなかったせいか、なんとダム水源(汚染は後日判明)の水を使って、シドニー内全域の水道管を洗管して汚染をさらに拡大させてしまいました。これは完全なミス。やり切れないのは、24時間徹して洗管作業にあたった現場の職員たちと作業員だったはず。頭が無責任で愚かだと下は悲惨です。シドニー水道がここまでアカンタレだったのは、水道管の汚染という勝手な言い訳にこだわって当初の言い逃れの責任を認めたくなかったためだったせいではないでしょうか。調査もせずにウソをいう不誠実さとバレてもそれを認めない不誠実さが二重に災害を拡大させたのではないかと私は思います。
8月になって、水源ダム、浄水場、水道管どこもが原虫汚染に曝されているのが判明。しかし、最初のボタンのかえ違えで汚染をシドニー全域に広げてしまった後では分析結果はバラバラ。ある日はたくさん病原虫が検出されたり翌日は出なかったり、これでは解釈困難です。このとき、もっと汚染源や汚染状況を突っ込んで調査すべきだったのに、シドニー水道と衛生当局は早くこの災禍から逃れたかったのか、不十分な状況のまま幕引きをしました。つまり、ちょっと小康状態になったということで8月5日に「なま水警報」を解除したのです。しかし、問屋は卸してくれなかった。
 8月下旬になって、またクリプトスポリジウムやジアーディアが水源等に見つかり、2回目の「なま水警報」を発令せざるを得なくなります。汚染源を確認せず問題を先送りした結果がこれです。この後9月最初に「警報」を解除して、すぐに5日には3回目の「警報」を出すことになるのですが、もう住民はシドニー水道と衛生当局への不信感をとっくに越えて、嫌悪感や諦めを感じてしまったのではないかと心配です。
わからないことはわからないと言うべきだし、調査が完了しないのに安全宣言するのもダメ。ウソは論外。情報公開以前の問題です。ただ、シドニー水道や衛生当局は一応測定データ等を一般公開して(インターネット、電話説明など)最低限の信義を守っていますが、日本ではこの手の情報公開はほとんどありません。だからこそ、日本の大都市で事件が起きたら大変なことになる、そう私は警告しているのです。