「原発ゼロは日本国を思う人たちの結論」

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そう云ったのは元総理の小泉純一郎さん。「黙って寝てはいられない」(2016 扶桑社)の中での一節です。3.11で原子力発電の危険性に気付いた人は多く、小泉さんもその1人。その情報発信力は知名度影響力を考慮すると絶大です。この本は全国で開催された彼の講演会での話をまとめたもの。

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koizumi16072011年3月11日の東北大震災に続く東電福島第一原発の爆発事故の悲惨さについてはもう語るまでもありません。これ以降、この国の社会制度改革や政治的な論議は3.11を無視しては成り立たないといっても過言ではないはずですが、それでも原発を推進すべきだという意見が世の中の半分を占めているのは私にとっては不思議です。

なぜなら、一度原発事故が起きてしまったら影響範囲にいる住民は健康影響に留まらず、土地や住居あるいは仕事を失い、総じて未来を奪われてしまうから。これはリスクの問題ではなくカタストロフ(破局)の認識問題です。

原発にいくら安全装置を施しても他国からミサイル攻撃されたらメルトダウン事故と同じかそれ以上。また、原発から出てくる核廃棄物は数万年以上、厳格に管理しなければなりません。どこで誰がどんなお金で・・・等と考えれば、答えはひとつ。要するに、そんな厄介な原発に手を出してはならぬ、という結論しか出てこないのです。


この本の中で小泉さん曰く、

総理時代の私は、頭のいい人たちにだまされていた(注:原発は安全だという専門家の言い分を鵜呑みにしていたという意味)、・・・・・

「原発がなくなったら、文明生活を送れない」なんていう人はまだいます。そういうのは「”生命線”である満州国を失ったら日本はやっていけない」と言っていた戦前の人たちと似ているな。・・・・・

日本国のことを考えたら「原発ゼロ」というのは、日本国を思う人たちの結論なのです。「そんなことはどうでもいいから金儲けのことを考えよう」という原発推進の人たちは”国賊”といえます。

という小泉さんの言い分で言えば、自民党・公明党の原発推進勢力や東芝や日立のような原発製造業、原発推進の電力会社、そしてそれら企業と結託した電機労連・連合のような労働者組織はみな”国賊”です。ちなみに、連合が今回の東京都知事選に際して”自主投票”と称しているのは、脱原発候補には票を入れないとの意思表示なのでしょう。

この本をまとめたのは前城南信金理事長の吉原毅さん。ある会合で遭遇した小泉さんに城南信金のシンクタンクである城南総合研究所の名誉所長をお願いした縁で、2人で自然エネルギーを推進する人たちの運動を支援する活動を行っているそうな。脱原発に保守も革新も右も左もありません。