被害は未だ不明;シドニー事件

Water

 シドニー当局の発表では、水道水中にクリプトスポリジウム&ジアーディアが少なからず検出された件によって7月以来の疾病の増加はないことになっています。本当でしょうか?

まず、この報告の根拠は当局が感染地域と非感染地域の双方で500人づつへの電話調査を行った結果、どちらも同程度しか下痢症状を訴える人がいなかったことを根拠にしています(2%程度)。これで断定するのは実に心もとない。もう少しサンプル数を増やし、地域割りを統計的に意味のあるものに設定してから調査したものを待つ必要がありますね。
常識的に考えてみましょう。下痢や腹痛を訴える人全部が州当局にわざわざ報告するでしょうか?軽微なものであれば尚更です。ミルウォーキーの例をひけば、あの事件当時も感染による下痢や腹痛を訴える人は多くいましたが、病院に行ってまで治療を受けた人は1割程度の4000人。ちなみに、感染者数の40万人は、統計処理を前提としたサンプル抜取電話調査ではじき出しています。
 もうひとつ。ジアーディアの治療薬の売れ行きが通常よりも20数%程度上昇したことを当局は認めていますが、それは薬屋さんが在庫増を狙ったものだと推測しています。つまり、薬がそれほど売れているわけではないので疾病も少ないはずだといいたいのでしょうか。しかし、クリプトスポリジウムに対する特効薬はありませんし、衛生当局自身が薬物治療を薦めていたわけでもないので、薬の売れ行きでもって判断するのはまだ早いというべきところでしょう。

  ちなみに、既に8月時点で州や水道当局に対する集団提訴が発表されており、その訴え件数500件のうち、約100件は下痢などの症状を提訴理由にしているとされています。それらを全くの勘違いだと州当局が主張するとしたら、どういう理由になるのか興味津々。なぜなら、製品(水道水)の中に原因(病原性微生物)が存在していたことを当局は認めているので、その被害(下痢や腹痛など)を訴える人がいた場合、その人におまえはウソツキだとは決して言えないはず。それがPL法の解釈ですね。