シロアリ薬剤処理、義務じゃない

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反農薬東京グループ『てんとう虫情報』(98/6月第77号所収) 98/06/25

住宅金融公庫の?Z資制度が今年秋から変わります。それに伴い、防蟻・防腐措置の取り扱いも変更されることになりました。 ひのきやひば等を土台に使う限り、従来の公庫仕様と同じで薬剤処理の必要はありません 。ところが、建設関係者の中には今回の変更によって危険なシロアリ薬剤や木材防腐薬剤等の使用が義務化されたと考える向きがあります。それは誤りです。

木造住宅工事共通仕様書・平成10年度版によると、10月1日以降に公庫融資を受?ッるためには、従来「耐久性タイプ」として記されていた仕様を満足しなければならなくなります。この耐久性タイプ仕様には防蟻・防腐措置が義務化されており、これが薬剤使用の義務化という誤解のもとになっているようです。
ひと昔前までは、殺虫剤を使用してシロアリ対策しないと住宅金融公庫の融資を受けられないという考え方が蔓延していました。ところが、93年11月18日岡崎トミ子衆議院議員が行った建設省・公庫に対するヒアリング(反農薬東京グループの辻さんが同席、『てんとう虫情報』第20号所収)により、この 危険なシロアリ対策は義務ではなく推奨規定 であることが判明。また、当局担当者らは、ヒノキやヒバなどシロアリに比較的強い木材を使えば薬剤処理は必要のないことを認め、公庫は翌94年春に薬剤処理に頼らなくともヒノキ・ヒバ等の土台を使う方法があることを工事仕様書に明記しました。しかし、危険な薬剤使用を完全に禁止したわけではなく、未だ至る所で人体に悪影響をもたらす化学物質が使用されています。また、建築現場では、未だに防蟻・防腐措置といえば化学薬品を使うことだと誤解している向きが多く、せっかくヒノキやヒバの土台を使っても?ワ散布しているという残念な話も絶えません。

さて、今回の公庫仕様変更では、「ひのき、ひばの他、べいひば、べいひのき、こうやまき、けやき、台湾ひのき、すぎ、からまつの耐腐朽性及び耐蟻性のある樹種若しくは、これらの樹種を使用した集成材を用いるか、又は薬剤による防腐・防蟻処理を行うものとする」とされています。使用木材の種類が増えたのは歓迎すべきことですが、この防蟻・防腐措置は融資適用の際の条件、いわば義務項目になりました。
上記文章からわかるように、 ひのき、ひば等の土台を使えば危険な薬剤を使う必要はありません し、ベタ基礎で床下換気を確保すれば十分なシロアリ対策になります。ところが、大手の住宅メーカーや建て売り業者が使う土台木材は、シロアリに弱い安価な米ツガ材である場合が多いので、そういう業者が、公庫のいう「耐久性」を満足しようとしたら、いきおい危険な薬剤使用とならざるを得ません。今回の公庫仕様の変更では、「耐久性」確保の名目のもとに危険なシロアリ薬剤を制度的に義務化し、住宅建設の化学物質依存体質を温存し、安価な木材を使った利潤追求の住宅商売を保護したとも言えます。
公庫の融資と関係なく家を建てればいいじゃないか、というのは問題解決にはなりません。たとえば、隣家が公庫仕様の危険な薬剤使用を使い、床下換気で近隣にばらまいてしまうと、いくら自宅が無薬剤で建てていても意味をなくすからです。つまり、自宅だけでなく周囲の家、そして全国の家が危険な薬剤を使わないという方向に向かわなければなりません。
もう一度繰り返しますが、今回の公庫仕様変更では、 どんな木材に対しても薬剤処理を義務化したわけではなく、ひのきやひば等の木材を土台にすれば薬剤処理の必要性はありません 。シロアリ薬剤が義務化されたと説明する業者等には、くれぐれもご注意下さい。