「基地」と「原発」、戦後70年の謎

.Books&DVD… 3.11

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか矢部宏治さんの「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」(集英社 2014)。帯に「戦後70年の謎を解く!」とありますが、私自身謎だった事柄が明快にわかりました。3.11以降、なぜ危険な原発が再稼働されていくのかチンプンカンプンですが、それもまた米軍基地問題の存在ロジックといっしょという著者の見立てには首肯。また、歴史的資料を基にして憲法9条の虚構性へ切り込む辺りは、右派左派問わず是非読んでほしいところです。きわめてお薦め。

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序文がいい。

3.11以降、日本人は「大きな謎」を解くための旅をしている。

そう著者の矢部さんは主張します。まさしく、その通り。というか、少なくとも私はそういう思いでいろんな本を読んだりしています。

だって、あれだけ大きな事故が起きたのに、いまだに責任をとる人は皆無。原発はメルトダウンしていないとテレビでヌカしていた大学教授らはいまだに安穏としているし、当局と一体化してウソ八百流していたNHKや大新聞にも何ら反省なし。

被災被爆で家や土地を奪われて人たちが大勢いる一方で、東電社員には未だにボーナスが出る世の中っておかしくないですか? なぜなのかと考えない人がいるとしたら、その人の感性は麻痺しているとしか思えません。それらの謎を米軍基地の問題と併せて解説していったのが、この本です。

この本の傑出した点は、日本の支配者がいったい誰なのかということが明快によく理解できること。それも陰謀論みたいな思い込み・決め付けではなく、歴史的な法文や条文その他関係者の証言を使いながら、ロジカルに議論を組み立てているのが二重丸。そして、原発も基地もすべて同じロジックで成立していることがわかると、いかにコケにされているかという怒りに辿り着くことでしょう。
rakan1411

また本の最後の辺りで、憲法9条の誕生を米国の公開資料や関係者の証言から明らかにし、戦争放棄の第一項はともかく、交戦権の否定という第二項は冷戦によってご破算になった経緯を説きます。要するに、著者は第二項は幻であり虚構であるという主張なのですが、私はこの点に同意します。だいいち、米国の核の傘の元でしか成立しない平和憲法なんて妄想・幻想の類でしかありませんからね(良く云ってユートピア論)。

それにしても、よくゾこの本を書いて下さいました。こんな本を読みたかった、心からそう思うとともに、著者の矢部さんのご尽力に感謝いたします。是非多くの人に読んで欲しいものです。

蛇足ながら、先日米国が日本にプルトニウムを返せと要求しました。戦後日本に研究開発の目的で貸していたものらしい。なぜこの時期という疑問がわきましたが、安倍政権の日本が某国とドンパチする危険性が出てきた、その時使うのが米国産のプルトニウムだとなると堪らないので、早く返せといったのではないか。テレビや新聞が詳しく触れなかったので尚更そう思います。これもまた「戦後70年の謎解き」から見えてくる見解の1つ(この本では触れられていません、念のため)。
momiji1411a