フォンダシオン・マーグ  ニース その10

.Travel & Taste

A1_ stPole質問です。イヴ・モンタンとシャガールに共通する場所といえば、どこでしょうか?

答はサン・ポール・ド・ヴァンス(Saint-Pole-de-Vence)。

先のVenceからバスで約10分。南仏アルプ・マリティム県の城塞都市の1つで、日々観光客で賑わっています。そして、この町外れに貴重な収蔵品を誇るマーグ財団の美術館があります。


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Saint-Pole-de-Venceの町に入ると、入り口付近のカフェにたくさんの人だかり。よ〜流行っているなぁと思っていると、そこが昔イブ・モンタンさんが経営していたお店だと後で知りました。どうりで。

調べてみると、モンタンさんがシモーヌ・シニョレさん(注)と結婚式を挙げたのも、このサンポール。また、シャガールが20年住んでいたとか、多くの画家や小説家がここで暮らしていたと聞くと、ここの場所との相性が良かったのでしょうか。今は喧噪な観光地と化しているので、ゆったり静かに創作に向かうという環境ではなさそうです。

A3_StP_MGT2私たち夫婦の目的はその城塞都市ではなく、町外れの美術館、フォンダシオン・マーグ。バス停からなだらかな坂を上って10分少々、閑静な森の中に忽然と大きな建物が現れます。

この美術館の落成は1964年、ちょうど今年は50周年。創設者のマーグ夫妻やその息子さんらが集めた絵画や彫塑、それも上質で興味深いものが集められているので、なかなか見飽きません。点数も多く、1時間くらいで全部鑑賞することはできないでしょう。


とくに、親交のあったミロやジャコメッティ、あるいは南仏に暮らしたボナール、シャガール、マチスなどの画家たちの傑作がふんだんにレイアウトされています。それも選りすぐった作品ばかりで密度の濃い内容となっており、数合わせのレイアウトみたいなのはありません。

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館内の写真は撮らなかったのですが、代わりに屋外の彫塑をパシャパシャ。ダリの庭やミロの庭など特定の作者だけで固めた空間は見所がありますから、被写体としては申し分なし。また、出口の外壁がシャガールだったり、カフェ横の小さな小さな礼拝堂の中にはBraqueのステンドグラスがあったりで、ちょっと気を抜くと面白い作品を見落としてしまいます(苦笑)。そ〜いえば、先日お話したリシエさんの作品もありましたね。

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この施設、フォンダシオン・マーグと称してミュゼ(ミュージアム)と云わないのはなぜか。マーグ夫妻が作りたかったのはスーパー美術館ではなく、芸術家が集う交流の場だったとのこと。それを受けてか、落成式の時に当時のフランス文化相だったアンドレ・マルローは「・・・ここは美術館ではありません」と祝辞を捧げています(出典:マーグ財団冊子)。そんなところに理由がありそうです。

とにもかくにも、なかなか楽しい時間を過ごすことができました。その後、Saint-Pole-de-Venceの町をぶらりと歩き、この日は小雨模様になりそうだったので宿のVenceに戻りました。(下はSaint-Pole-de-Venceの街中です)

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さて、ここ3日の行程は以下の通り。ホンマ、ニース周辺はどこに行ってもアートでいっぱい。時間がいくらあっても足りません。
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(注)シモーヌ・シニョレと聞くと、思い出すのはメルヴィルの『影の軍隊』(1969)。大戦中のパルチザンを取り扱った映画ですが、シニョレさん扮するパルチザンの末路が印象的。