ブラックスワン

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The Black Swan: The Impact of the Highly Improbableここ数日、N.Nicholas Talebの The Black Swan に嵌っています。30年ぶりに数学の本を引っ張り出して参照しながら貪り読み、知的興奮状態の最中。まだ読み終えていないので読後感ではなく、いわば書評の予告編。  

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もとはといえば、タレブの「まぐれ」(ダイヤモンド社 2008.1.31)を読んだのがきっかけ。その本の中に著者の「ブラックスワン」も現在翻訳準備中とのことだったのですが、待ちきれずに原書を入手。先週から読み始めましたが、英語であることを忘れるくらい面白い(わからない単語は飛ばして読むので取り違え多々あり)。まぁ好みには個人差があるため、そんなものスカだという人がいても私は預かり知りません。

「まぐれ」は、実力とまぐれとの差について論じたもの。目から鱗の話で満載です。こちらも後日紹介する予定?なので期待せずお待ち下さい。

さて、「The Black Swan」の方は、「まぐれ」で垣間見せたブラックスワンという概念を定義し、それを統計学の基礎から解説したもの。従来の社会科学は事象の発生について、ガウス分布つまり正規分布を前提にしています。流行りの金融工学はその最たるもの。

その金融工学ですが、私はなんともスッキリしません。ノーベル賞学者を擁したLTCMが破綻した時、専門家はどう説明したのか。引き金となったロシア危機のような事件は通常起こりえないもので、起こるとしても天文学的に微小な確率でしかないと言い訳して責任回避。タレブ曰く、それは事象の生成をガウス分布で考えるからだと喝破します。私もそう思います。その時の責任者であるメリウェザーは今回のサブプライムでも大損こいていますので、何とかは死ぬまで直らない・・・ということかもしれません。

ここ数十年の金融市場をみれば、金融工学で説明することのできない、つまりガウス分布で規定される事象では説明できないことが結構たくさん起きています。1987年のブラックマンデー然り、1990年の日本のバブル崩壊、1997年のアジア危機、1998年のロシア危機からLTCM破綻、そして911。ほとんど起こらないはずの出来事がなぜ頻繁に起きるのか。要するに、人間の欲や恐怖、はたまた人種間の闘争が絡んでくると、ガウス分布のような平均と偏差でみる世界観では到底太刀打ちできないということではないのでしょうか。

私自身、金融工学の基礎の脆弱性については常日頃不信感を持っていましたので、タレブの言い分にはそうだそうだと拍手喝采。今まですっきりしなかった点について多々わかってきました。ラッキー。学生時代から数えて約30年来の宿題が解けそうな感じに、ここ数日興奮状態です。

扉に「マンデルブロへ」との謝辞があるのを見て、最初あれっと思いましたが、読み進めて了解。タレブさんはマンデルブロのフラクタルにガウス分布に代わるものを見い出しています。続きは読み終えてから(いつのことやら)。